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人は〇〇〇で起きると幸福感が上がる?脳科学者瀧靖之先生に聞いた家族にうれしい住環境

作成者: KIDSKI STYLE編集部|2024/9/27

家族があたたかく、やさしい気持ちで暮らせるおうちって? 脳科学の第一人者・瀧靖之先生に、脳科学の見地からみたよりよい住環境について伺いました。

瀧靖之(たき・やすゆき)/1970年生まれ。医師。医学博士。東北大学大学院医学系研究科博士課程卒業 。東北大学加齢医学研究所臨床加齢医学研究分野教授。東北大学スマート・エイジング学際重点研究センター センター長。 脳のMRI画像を用いたデータベースを作成し、脳の発達、加齢のメカニズムを明らかにする研究に従事。読影や解析をした脳MRIは、これまで16万人分にのぼる。一児の父。

人は暗いところにいるとよくない

――そこに居るだけで脳が活性化するような住環境というのはありますか?

一般的にこれ、というのはむずかしいですね。わたしの場合は昔から間取りが大好きなんです。家の部屋それぞれの壁の色、窓の配置の仕方、光の取り方、間接照明か直接照明か、間接照明だとどんなふうに埋め込むか。そういうことを考えるのが楽しい。

わたしはオーソドックスに、視線が抜ける間取りが好きなんです。いろんなところを見た時きれいに視線が抜けて、窮屈さを感じない。かつ、光がきれいに取れる間取りが大好き。ですが、何が好きで何に脳が活性化するかは人による差が大きいでしょうね。

――瀧先生もお好きということですが、光の取り入れ方を工夫されてるお家をよく見かけます。光をたくさん取り入れた方がいい理由はありますか?

身体が日内変動に合いやすくなるのでしょうね。

――なぜでしょうか?

私たちの体は、概日リズムといって、多くの生理的機能が昼夜変化の明るさに同調して、約24時間の周期で体内環境を適切に変化させることで、恒常性を保っています。

ただ都会の家だと、隣の家と視線がぶつかるじゃないですか。だから話はそう簡単ではないと思いますが、光を取り入れられるならば取り入れた方がいい。でも南側の直射日光が当たると家具はすぐに色が焼けてしまうので、シンプルな話でもないかなとは思います。とは言え、光があふれてた方がいいですよね。

――明るいおうちのほうが住みごこちよさそうですよね。

光以外で必要だと思うのは、ただ、リラックススペースですね。畳のスペースだとごろんとできて、すごくいいですよね。我が家にもそういうスペースがあって、リビングに和室をくっつけています。その和室はリビングから一段高くして、縁に座れるようにしてありますね。 ゴロゴロしたり、筋トレしたりするための場所です。

※写真はイメージ(gettyimages/Sasiistock)

スムーズな入眠のコツは「あたたかい→涼しい」

――睡眠の質が向上する環境について教えていただけますか?

これも人によってかなり異なるのですが、個人的には遮光カーテンを避けています。

――遮光カーテンはむしろいいのかなと思っていたので意外です!

全然ダメではないのですが、起きられなくなると思います。一般に人は音よりも光の方が起きやすいと言われてます。だから目覚ましで起きるよりも、明るさで起きた方が楽なんです。緩やかに明るくなるような環境で起きると、寝起きが良いと言われています。

※写真はイメージ(gettyimages/Sasiistock)

だからホテルに宿泊する時もカーテンをあまり閉めないで、朝の光が入ってくるようにしています。遮光カーテンを好きな人を否定したくないのでダメと言うつもりはないのですが、医学的には起きづらいかなとは思います。

――ちなみに寝室の照明はどのようなものだと寝やすいでしょう?

色温度の高い照明にして、少し暗めにすると睡眠導入はスムーズになります。あとは、少し涼しめがいいですね。体をあたためたあと少し涼しくすると、人は入眠しやすいと言われています。だから、半身浴をしたりあたたかいものを飲んだりして体をあたためたところで、少し涼しめの寝室に行くと寝やすい。

――子どもの睡眠環境で気を付けることはありますか?

現代の生活だと、どうしても大人の生活リズムに合わせてしまいがちですよね。大人も夜遅くまで仕事せざるを得ないし、スマホを見たりしているから。だからそこをどう切り離すかでしょう。

……でも、難しいですよね。我が家はまさに寝室も他の部屋と空間的につながっているので。一応寝室だけは照明が暗くなるようにしていますが、クローズドな空間の方が寝やすいかもしれないですし、だけど今の状態の方が寂しさは感じないはずですし。

――ある程度人の気配を感じた方が寝やすいと聞いたことがあります。

きっと、人の気配があった方が子どもは怖がらないで済みますよね。暗いけど人の気配は感じる、という状態が安心できるのかなと思います。

いつでも話せるあたたかな住環境を

――最後の質問です。瀧先生の個人的な思いを含め、家づくりで実現したいと思うポイントを教えていただけますか?

シンプルに、コミュニケーションが進む間取りがベストだと思います。あとは温熱環境ですね。だから大空間にして、全部の温熱環境を一定にするのが個人的には好きですね。コミュニケーションもはかどるし、心血管系に関わる負荷も小さくなります。

――個人的な好みがあるにしても、コミュニケーションと温度は誰にとっても大事ですよね。既存のおうちでも実践できるヒントがあったらいいなと思うのですが、何かございますか?

コミュニケーションに関して言えば、子どもには少し申し訳ないけどある程度子どもが大きくなるまでは敢えて子ども部屋を作らないことでしょうか。その代わりに子どものためのスペースを作ってあげるといいと思いますね。勉強したり、本や図鑑を置いておいたりする場所です。

※写真はイメージ(gettyimages/Sasiistock)

リビングに作業をする机置いておく、勉強や仕事のできる場所を作るとか、そういうことであればすぐに実践できるのかなと思います。

――すぐに試してみたいですね。瀧先生、どうもありがとうございました!

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