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断熱等性能等級とは?住宅展示場で確認すべき住宅性能を解説

作成者: KIDSKI STYLE編集部|2025/6/30

※写真はイメージ(Adobe Stock/CinimaticWorks)

 

「この家、断熱性能が高いんです」と住宅展示場で説明を受けても、具体的に何を見て判断すればいいのか分からず戸惑った経験はありませんか?家の断熱性能は、冬の暖かさや夏の涼しさだけでなく、光熱費や健康面、将来の資産価値にまで影響するため、非常に重要な要素です。中でも「断熱等性能等級」は、国が定めた住宅性能の指標であり、住まい選びの基準として近年ますます注目を集めています。

今回の記事では、断熱等性能等級の基礎知識から、展示場でチェックすべき項目、そして高断熱住宅を建てるために知っておきたいポイントなどについてご紹介します。見た目や設備だけでなく「性能」にも目を向けることで、快適さと経済性を兼ね備えた理想の住まいが見つかるかもしれません。

 

断熱等性能等級とは?快適な住まいを見極めるための重要な指標

※写真はイメージ(Adobe Stock/Curie)

 

断熱等性能等級とは、住宅の「熱の逃げにくさ」、つまり断熱性能を数値化した基準のことです。

具体的には、「建物からの熱の逃げやすさ(UA値)」、「建物への日射熱の入りやすさ(ηAC値)」の2つの数値データから性能を確認することができます。

この等級が高いほど、住宅内部の温度を一定に保ちやすくなり、冷暖房効率が向上して、快適かつ省エネな暮らしが実現できるといわれています。

2022年には、これまでの等級1〜4に加え、より高性能な住宅を評価する新たな等級5〜7が導入されました。現在では、等級4が「省エネ基準に適合している住宅」の最低ラインとされており、それ以上の等級を目指すことが、光熱費の削減や快適性の向上に直結します。

等級が高くなるほど、冬は暖かく夏は涼しい住まいが可能となり、毎月の光熱費も抑えられるため、経済的にもメリットの大きい選択といえるでしょう。

 

出典:「断熱性能とは?」/国土交通省

出典:「省エネ性能に優れた断熱性の高い住宅の設計ガイド」/国土交通省

 

断熱等性能等級の基準は?

※写真はイメージ(Adobe Stock/kapinon)

 

断熱等性能等級は、住宅の断熱性能を「UA値」と「ηAC値」という2つの指標で評価しています。ここからは、断熱等性能等級の基準について詳しく見てみましょう。数値の意味や基準を知ることで、住まいの快適性や省エネ性をより正確に比較できるようになるでしょう。

 

断熱等性能等級の基準

国土交通省のデータによると、断熱等性能等級は下表のような基準がもうけられています。

 

断熱等性能等

基準

等級7

熱損失等のより著しい削減のための対策が講じられている

等級6

熱損失等の著しい削減のための対策が講じられている

等級5

熱損失等のより大きな削減のための対策が講じられている

等級4

熱損失等の大きな削減のための対策(建築物エネルギー消費性能基準等を定める省令に定める建築物エネルギー消費性能基準に相当する程度)が講じられている

等級3

熱損失等の一定程度の削減のための対策が講じられている

等級2

熱損失の小さな削減のための対策が講じられている3を併せて明示することができる

等級1

その他

 

出典:「住宅性能表示制度の見直しについて」/国土交通省

 

断熱等性能等級はどうやって決まる?

断熱等性能等級は、住宅の断熱性能を客観的に評価するために設けられた指標で、「UA値(外皮平均熱貫流率)」と「ηAC値(冷房期の平均日射熱取得率)」という2つの数値データをもとに等級が決まります。これらの数値を知ることで、目に見えない「家の性能」を正しく比較・判断することができます。

高性能な住宅を選ぶには、外観や設備だけでなく、こうした数値による性能の裏付けにも注目することが重要です。「UA値(外皮平均熱貫流率)」と「ηAC値(冷房期の平均日射熱取得率)」について詳しく見てみましょう。

 

UA値(外皮平均熱貫流率)とは

UA(ユーエー)値は、住宅の内部から外部へ逃げる熱量を表す指標で、値が小さいほど断熱性能が高く、省エネルギーな住宅であることを示すものです。

具体的には、屋根・外壁・床・窓などの「外皮」と呼ばれる部分からどれだけ熱が逃げるかを平均的に算出したもので、冷暖房の効率や室内の温熱環境に直結します。

例えばUA値が0.46以下であれば、断熱等性能等級6以上の高水準となり、冬の暖房効率が高まり、室内温度が安定する快適な暮らしが実現するでしょう。断熱性を重視する場合は、このUA値に注目して、数値がより小さい住宅を選ぶのがポイントです。

 

ηAC値(冷房期の平均日射熱取得率)とは

ηAC(イータ・エーシー)値は、冷房が必要な時期において、外からどれだけ日射熱が室内に入り込むかを示す指標です。値が低いほど、夏の日差しを遮る工夫がされており、冷房効率が良く、室温の上昇を抑えられる住宅であることを表します。

この数値は、窓の方角やガラスの性能、庇などの建築的工夫によって大きく左右されるといわれています。ηAC値が低い住宅は、夏でも室内が暑くなりにくく、冷房費を抑える効果が期待できるため、夏の暑さ対策としても非常に重要な指標といわれています。

 

地域によって基準は異なる

UA値やηAC値の基準は、全国一律ではなく、気候区分ごとに異なる基準値が設定されています。寒冷地と温暖地では求められる断熱性能が違うため、住む地域に応じた基準を正しく理解することが大切です。

出典:「住宅性能表示制度の見直しについて」/国土交通省

 

なぜ断熱性能が重要なの?【性能が家計・健康に与える影響】

断熱性能の高さは、快適な室温を保つだけでなく、家計の負担軽減や家族の健康、さらには将来の資産価値にも大きく関わってきます。性能の高い家は、見た目には現れない“暮らしの質”を支える重要な土台となるでしょう。

ここからは、断熱性能が家計や健康に与える影響についてご紹介します。

 

光熱費を抑えられる

※写真はイメージ(Adobe Stock/umaruchan4678)



断熱性能が高い家は、外気の影響を受けにくいため、冷暖房の効率が格段に向上します。エアコンや暖房器具の稼働時間が短くて済み、結果として年間の光熱費を大きく抑えることができるでしょう。

 

ヒートショックや結露を防げる

部屋ごとの温度差が小さくなることで、ヒートショックのリスクが軽減され、高齢者や子どもにも安心な住環境が整います。

また、壁や窓の表面温度が下がりにくくなるため、結露の発生も抑えられ、カビやダニの繁殖を防いで健康被害のリスクも低減することができるでしょう。

 

長期的に見た資産価値・メンテナンスコストにも影響

高い断熱性能を持つ住宅は、将来的な売却時にも「性能の良い家」として評価されやすく、資産価値の維持に有利だといわれています。さらに、結露や劣化のリスクが少ないため、構造体や内装材のダメージも抑えられ、長期的なメンテナンスコストの削減にもつながるでしょう。

 

国の補助金の対象になるケースも

断熱性能の高い住宅は、国や自治体が実施する住宅支援制度の対象になることもあります。例えば、長期優良住宅やZEH認定住宅などの省エネ性能の高い住宅は、補助金や住宅ローン減税の対象となり、家づくりにかかる初期費用の軽減につながる可能性があります。

 

住宅展示場で「断熱等性能等級」を確認する方法

住宅展示場では、実際の建物を体感しながら、性能に関する情報を具体的にチェックすることができます。見た目だけでなく「中身」の性能まで丁寧に確認することが、快適で長く住める家づくりへの第一歩といえるでしょう。

 

パンフレット・性能証明書を確認

モデルハウスには、各住宅の性能が記載されたパンフレットや性能証明書が備えられていることが多くあります。これらの資料には、「断熱等性能等級」が等級4〜7のどれに該当するか、そしてUA値・ηAC値などの具体的な数値が記載されているため、性能の比較や判断にとても役立つでしょう。見学時は資料の有無を確認し、スタッフに説明を求めるのがおすすめです。

 

壁や床、窓の断熱材や構造を実際に見て触れる

断熱性能は、壁や床、窓といった住宅の“構造部分”に大きく影響されるといわれています。展示場では、壁の内部構造をカットモデルなどで見られる場合もあり、断熱材の厚みや種類、施工方法を確認する絶好のチャンスになるでしょう。

高性能樹脂サッシやトリプルガラスなど、断熱性の高い窓の仕様もチェックポイントのひとつです。見て、触れて、素材感や性能の違いを体感することで、より納得のいく住まい選びができるでしょう。

 

スタッフに質問するポイント例

※写真はイメージ(Adobe Stock/buritora)

 

住宅展示場のスタッフは、そのモデルハウスに使われている断熱仕様について詳しい情報を持っています。気になる性能については遠慮せず、具体的な数値や材料名などを確認することが後悔のない家づくりにつながるでしょう。以下のような質問を参考に、積極的に情報を引き出してみましょう。

 

「この家の断熱等性能等級はいくつですか?」

 断熱等性能の全体像をつかむ第一歩の質問です。断熱等性能等級4〜7のどこに該当するかを確認しましょう。可能であれば、その根拠となる認定書類の提示をお願いするのもいいかもしれません。

 

「UA値とηAC値はそれぞれどのくらいですか?」

 断熱等性能の具体的な数値を聞くことで、他社との比較がしやすくなります。とくにUA値は断熱性、ηAC値は夏の涼しさに関わる重要な指標です。

 

「使用している断熱材の種類と厚さは何ですか?」

 壁や床に使われている断熱材の種類・性能・施工方法も断熱性に大きく関わります。グラスウール、硬質ウレタン、セルロースファイバーなど、断熱材によって性能やコスト、耐久性が異なるため、具体的な材質名を確認しておくといいでしょう。

 

「気密性(C値)はどのくらいですか?」

 断熱とセットで確認すべきなのが「気密性」です。C値(隙間相当面積)の数値が小さいほど、家の隙間が少なく空調効率が高くなります。気密測定の実績があるか、数値はどの程度かを確認しましょう。

上記の質問は、パンフレットでは分からない施工の質や実性能に迫る手段でもあります。質問する際は「他社との比較の参考にしたい」と伝えると、より詳しい情報を得やすくなるでしょう。気になることは率直に聞くことが大切なポイントです。

 

高断熱住宅を建てたいなら知っておきたいポイント

※写真はイメージ(Adobe Stock/yuz)

 

断熱性能は「等級が高ければそれでOK」ではなく、家全体の設計や設備、施工体制とセットで考えることが重要です。ここからは、快適さ・省エネ・健康を兼ね備えた高断熱住宅を実現するために、知っておきたいポイントをご紹介します。

 

断熱等性能等級5級以上の住宅がおすすめ

国は2030年以降、断熱等性能等級5を新築住宅の実質的な基準とする方針を示しています。長期的な視点で考えると、現時点で等級5以上の性能を確保しておくことで、将来的な資産価値の維持や制度変更にも柔軟に対応できるようになるでしょう。

 

高等級を目指すならハウスメーカー選びが重要

断熱等性能等級6や7といった高等級を目指す場合、施工技術や部材の選定力、設計力に長けたハウスメーカーを選ぶことが欠かせません。カタログ上のスペックだけでなく、過去の施工実績や断熱・気密測定の有無など、実績ベースで信頼できる会社を選ぶことが成功のカギです。

 

気密性・換気計画もセットで確認

断熱性と同じくらい重要なのが「気密性(C値)」と「換気計画」です。断熱性が高くても、気密が甘ければ空気が漏れてしまい、本来の効果が発揮されません。さらに、適切な換気設計がされていないと結露や空気のよどみの原因にもなってしまいます。住宅性能は「断熱・気密・換気」の三位一体で考えることが重要です。

 

パッシブ設計・全館空調との相性

高断熱住宅は、自然の力を活かす「パッシブ設計」や、家中の温度を均一に保つ「全館空調」と非常に相性がいいといわれています。このようなものと組み合わせることで、冷暖房効率をさらに高め、一年中快適でエネルギーコストの少ない住まいを実現することができるでしょう。設計段階でこうした要素を取り入れられるかどうかも検討材料にするといいかもしれません。

 

住宅性能表示制度や長期優良住宅認定も視野に入れる

断熱性能を含む住宅の品質を第三者の基準で評価してもらう方法として、「住宅性能表示制度」や「長期優良住宅認定」の活用があります。このような制度に適合した住宅は、補助金や税制優遇、住宅ローンの優遇などの面でも有利になる可能性があり、安心して暮らせる住まいづくりの強い味方となってくれるでしょう。

 

補助金や住宅ローン減税の対象になる可能性も

高断熱住宅は、性能面のメリットだけでなく、金銭的な優遇制度の対象になりやすい点でも注目されています。住宅ローン控除や補助金を上手に活用することで、初期費用や将来の負担を大きく軽減できる可能性があります。活用できる主な制度をご紹介します。

 

住宅ローン控除

※写真はイメージ(Adobe Stock/ELUTAS)



高断熱仕様を満たす「省エネ基準適合住宅」は、住宅ローン控除の対象となります。控除期間は原則13年間で、毎年の年末ローン残高に対して0.7%分が所得税などから控除されます。住宅ローン控除を活用すると、家計への負担を大きく減らすことができるでしょう。

住宅ローン控除は、取得する住宅の種類によって借入限度額や控除額の上限が異なるため、より高い断熱性能を持つ住宅を選ぶことで、より多くの恩恵を受けられる可能性があります。また、性能表示や長期優良住宅の認定などと併用することで、控除の条件を満たしやすくなるケースもあるため、設計段階から制度の確認をしておくことが大切です。

 

出典:「住宅ローン減税」/国土交通省

出典:「住宅ローン減税等に係る所要の措置(所得税・個人住民税)」/国土交通省

 

補助金・支援制度

昨今、省エネ性能の高い住宅を対象にした補助金や支援制度が充実してきているので、住宅ローン控除以外にも以下のようなさまざま制度があります。

 

子育てグリーン住宅支援事業

子育てグリーン住宅支援事業とは、省エネ性能の高い住宅を取得した場合に補助金が交付される制度をいいます。全世帯が対象となる制度ですが、子育て世帯には優遇措置が設けられています。

補助額は住宅の種類によって異なり、40〜160万円の補助金を受け取ることができます。

子育てグリーン住宅支援事業の手続きは、登録された施工業者(登録事業者)が代理申請して行います。制度を活用したい場合は、該当の補助金に対応している事業者かどうか、契約前に確認しておくと安心です。

 

出典:「子育てグリーン住宅支援事業 事業概要」/国土交通省

 

ZEH補助金制度

ZEHとは「ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス」の略称で、冷暖房・給湯・照明など住宅で使うエネルギーを、太陽光発電などで創るエネルギーでまかなうことで、1年間のエネルギー収支を実質ゼロ以下にすることを目指した住宅のことをいいます。

ZEH補助金制度は、このようなZEHを取得した場合に補助金が交付される制度です。補助額は、設備の性能によって異なり、55~90万円の補助金が交付されます。

ZEH補助金の申請は、国の認定を受けた「ZEHビルダー」や「ZEHプランナー」などの登録事業者が代行しておこないます。補助を希望する場合は、ZEH対応の事業者かどうか、契約前に必ず確認しておきましょう。

 

出典:「ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)」経済産業省

 

自治体独自の補助制度

上記のような国が行う補助制度以外にも、自治体が独自で行っている補助制度もあります。今回は東京都の補助制度についてご紹介します。

東京都では、「東京ゼロエミ住宅」という補助制度を設けています。「東京ゼロエミ住宅」とは、東京都が独自に定めた省エネ・断熱性能の高い住宅基準を満たした住まいのことをいいます。「ゼロエミ」とは「ゼロエミッション(ZERO EMISSION)」の略で、高性能な断熱材や窓、省エネ性能の高いエアコンや給湯器などを導入することで、家庭からのCO₂排出を大幅に削減することを目的としています。

東京都が設けた基準を満たした住宅を新築・購入する場合、東京都から助成金が交付され、戸建住宅や集合住宅の種類・性能に応じて、30万〜240万円の補助を受け取ることが可能です。

対象となる住宅は「東京ゼロエミ住宅の仕様書」に適合している必要があり、認定された設計・施工事業者を通じて申請手続きが行われます。また、太陽光発電設備の有無や、断熱等性能等級のランクによって補助額が変わるため、仕様をよく確認したうえで活用することが大切です。

 

出典:「『東京ゼロエミ住宅』とは?」/東京都環境局

 

なお、今回ご紹介した制度内容は2025年6月25日の記事作成時点の情報です。制度の活用にあたっては、国土交通省や施行会社、各自治体のホームページなどに確認しましょう。

 

【まとめ】住宅展示場で断熱性能をしっかりチェック!

※写真はイメージ(Adobe Stock/Zoey106)

 

今回の記事では、断熱等性能等級の基礎知識から、住宅展示場で注目すべきポイント、高断熱住宅を建てるために押さえておきたい要素などについてご紹介しました。

断熱等性能等級は、住宅の快適さ・光熱費・健康維持といった暮らしの質に直結するとても重要な指標です。展示場を見学する際には、パンフレットや性能証明書の内容を確認するのはもちろん、スタッフの説明を通じて数値や使用素材などの“中身”まで丁寧にチェックしましょう。

家族が長く快適に暮らせる住まいを実現するためにも、デザインや間取りだけでなく、「性能」にも注目して住宅を選ぶ視点を持つといいかもしれません。

 

お近くの住宅展示場はこちら!

https://www.housingstage.jp/exhibition



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