階段の「手すり」高さは何cmがベスト?安全に使える設計のコツ



※写真はイメージ(Adobe Stock/Ankur)

 

階段の手すりは、設置しただけで安心だと思っていませんか?実は高さの違いが、家庭内の安全性に大きく影響します。特に小さなお子さまや高齢のご家族と暮らす家庭では、手すりの位置ひとつで事故のリスクが大きく変わることもあります。住宅には法的な基準もあるため、設置前にしっかりチェックしておくことが大切です。

今回の記事では、安全性を確保しながら家族構成やライフスタイルに合った手すりの高さや設計のポイントなどについてご紹介します。新築やリフォームを検討中の方は、ぜひ参考にしてください。

 

階段の手すりはなぜ必要?

※写真はイメージ(Adobe Stock/Nick Beer)

 

階段は日常生活の中で転倒事故が起きやすい場所のひとつです。だからこそ、誰にとっても使いやすく、安全に昇り降りできるよう「手すりの設置」が重要になります。なぜ階段の手すりが必要なのか見てみましょう。

 

階段の安全性を高めるため

階段の手すりは、転倒を防ぐだけでなく、昇り降りのバランスを支えたり、歩行をサポートしたりと、日常動作の安心感を高めてくれる存在です。特に小さな子どもや高齢者、妊娠中の方、足腰の弱い方にとっては、つかまる場所があることで不安が軽減され、安全性が大きく向上します。家族全員が安心して使える住まいづくりのために、手すりは欠かせない設備のひとつといえるでしょう。

 

手すりの設置は法律で決められている

階段の手すり設置は“努力義務”ではなく、一定の条件下では法律で義務づけられています。

建築基準法施行令第25条では、「階段には手すりを設けること」が明記されています。特に2階建て以上の建物や、高さのある階段には、原則として手すりが必要です。

手すりを設置することで、住宅の安全性を法的にも担保し、事故のリスクを最小限に抑えることが求められています。リフォームや新築の際には、この基準を必ず確認しておきましょう。

 

出典:「建築基準法施行令」/デジタル庁

 

手すりの高さに関する法的基準は?

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法律で高さの決まりはある?

「手すりを設けること」は建築基準法で定められているものの、その高さについては明確な法的規定はありません。しかし、より安全性に配慮した住宅を目指す場合は、他の制度や基準を参考にすることが重要です。

「住宅の品質確保の促進等に関する法律」に基づく住宅性能表示制度では、「高齢者への配慮に関すること」の評価項目のひとつに手すりの設置基準が含まれています。

なかでも最高等級である等級5では、階段の手すりは握りやすさや連続性、安全な高さの確保などが求められています。こうした基準を満たすことで、高齢者や体力の弱い方にとっても安心して使える住まいになるでしょう。

 

一般的な手すりの高さは?

実際の住宅現場では、階段用手すりの高さは一般的に75〜85cm程度が目安とされ、身長や使用者の身体的特徴によって微調整されることもあります。高さが低すぎると前かがみになって姿勢が不安定になり、高すぎると握りづらくなってしまいます。「誰にとって使いやすいか」を意識した設計が重要です。

手すりは単に設ければよいのではなく、高さ・位置・連続性などを含めたトータルの使いやすさを考慮することが、安全性と快適性を両立させる鍵になるでしょう。

 

出典:「9 高齢者等への配慮に関すること」/国土交通省

出典:「住宅の品質確保の促進等に関する法律」/国土交通省

 

家族構成・ライフスタイルに合わせた最適な手すりの高さと設計

階段の手すりは、家族全員が安全に使えるように設計することが大切です。誰が使うのか、どんな場面で使うのかによって、適切な高さや仕様は変わってきます。

ここからは、手すりの最適な設計についてご紹介します。

 

子どもがいる家庭

小さな子どもは大人用の手すりに手が届かず、階段の昇り降りが不安定になりがちです。そのため、子ども用の下段手すりを設置するのがおすすめです。子どもの身長に合わせて60cm前後に設置することで、階段を安全に使えるようになります。

また、滑りにくい素材や角のないデザインを選ぶことで、さらに安心感が高まるでしょう。

 

高齢者がいる家庭

※写真はイメージ(Adobe Stock/UTS)

 

加齢に伴い筋力やバランス感覚が低下する高齢者には、握りやすい太さの手すり(直径32〜36mmが目安)を選ぶことが重要です。さらに、手すりと壁との間には最低3.5cm以上の隙間を確保することで、指がしっかり入って支えやすくなります。階段の上下だけでなく、中間部分にも設置すると、転倒リスクの軽減につながるかもしれません。

 

車椅子・バリアフリー対応住宅の場合

階段の利用に不安がある方や、将来的に車椅子生活を想定している場合は、段差の連続性や動線の確保がカギになります。スロープの併設や、手すりの連続性を意識した設計にするといいでしょう。

また、段差の昇降が必要な場面でも、途切れずにつかまれる手すりがあれば、自立した移動をサポートできるかもしれません。

 

将来を見据えた「ユニバーサルデザイン」の考え方

子どもや高齢者だけでなく、誰にとっても使いやすい設計を目指すのがユニバーサルデザインの考え方です。手すりの高さや位置を柔軟に調整できる設計や、段差の少ない構造、滑りにくい素材の採用などが含まれます。将来の変化にも対応できるようにしておくことで、長く快適に住み続けられる住まいになります。

 

手すりの種類と設置アイデア

※写真はイメージ(Adobe Stock/M&M Factory)

 

手すりは「どこに」「どのように」設置するかによって、安全性や使いやすさ、見た目の印象が大きく変わります。暮らしに合ったスタイルを選ぶことが、満足度の高い家づくりにつながるでしょう。

 

片側設置 or 両側設置のメリット・デメリット

階段の手すりは、片側だけに設ける「片側設置」と、両方の壁に取り付ける「両側設置」があります。片側設置は省スペースでコストも抑えやすい一方、左右どちらか片手しか使えないため、使用者によっては不便に感じることがあるという声が聞かれました。

一方、両側設置は高齢者や小さな子ども、身体に不安がある方にとって安心感が高く、左右どちらの手でも支えられるのが大きなメリットです。安全性を重視するなら、両側設置がおすすめです。

 

壁付け型・独立型・スリット手すりなどのデザインタイプ

手すりの形状にはさまざまなバリエーションがあります。壁付け型は一般的でスッキリした印象に仕上がりやすく、コスト面でも導入しやすいのが特徴です。

独立型(スタンド型)は階段の中心側に柱を立てて設置するタイプで、手すりの連続性や安全性が高く、デザインの自由度もあります。

スリット手すりは階段の壁面に溝のように組み込まれたスタイルで、ミニマルで洗練された空間を演出したい方に人気のようです。

デザインだけでなく、握りやすさや安全性も加味して選びましょう。

 

実際の施工例を見てイメージ

実際の住宅で採用されている手すりの事例を見ると、設計のイメージがぐっと湧きやすくなるでしょう。

例えば、木製の壁付け手すりで温かみを演出したケースや、黒いスチール製のスリット手すりでモダンな印象に仕上げた例など、ライフスタイルやインテリアのテイストによって選ばれるデザインはさまざまです。ショールームやモデルハウスの見学時に、素材・高さ・設置場所など細かくチェックしておくと、自宅の手すり設計にも役に立つかもしれません。

 

手すりを設置する際の注意点

※写真はイメージ(Adobe Stock/ELUTAS)

 

手すりは正しい高さに設置するだけでは不十分です。安全で使いやすい手すりにするためには、いくつかの重要なポイントに注意する必要があります。

 

手すりと壁の間隔

手すりと壁との間には最低でも3.5cm以上の間隔を空けることが大切です。このスペースがないと、手がしっかりと入り込まず、握りづらくなってしまいます。特に高齢者や握力の弱い方にとっては、安全性に直結するポイントです。

 

壁の構造を確認

取り付け時の固定金具の強度や、下地補強の有無も非常に重要です。壁の構造によってはビスが効きづらいことがあり、そのまま設置すると使用中に手すりがぐらついたり、最悪の場合外れたりする恐れがあります。設置前には必ず壁の下地を確認し、必要であれば補強を施しましょう。

 

手すりの素材や質感

手すりの素材や質感によって滑りやすさや触れたときの印象が大きく変わります。たとえば木製は温かみがあり、手にしっくりなじむ反面、水や湿気にはやや弱い傾向にあるようです。アルミ製や樹脂製は耐久性に優れていますが、表面がツルツルしているものは手が滑りやすくなる可能性があるため、凹凸加工があるタイプを選ぶと安心です。

 

デザインと安全性のバランス

忘れてはならないのが、デザインと安全性のバランスです。空間にマッチするおしゃれなデザインを重視するあまり、安全性が犠牲になっては本末転倒になってしまいます。スタイリッシュな見た目と、安心して使える構造の両立を目指しましょう。

 

よくある質問(Q&A)

※写真はイメージ(Adobe Stock/hogehoge511)

 

階段の手すりに関する疑問は、設計段階で多くの方が悩むポイントです。ここでは、家づくりやリフォーム時によく寄せられる質問を、分かりやすく解説します。

 

Q:子ども用の手すりって必要?

A:はい、小さなお子さまがいるご家庭では、専用の「下段手すり」を設置するのがおすすめです。

通常の手すりは大人の肩〜腰の高さ(75〜85cm)に設置されるため、子どもの手が届かず、階段を昇り降りする際に不安定になりがちです。子ども用の手すりは60cm前後の高さが目安といわれています。しっかりと握れることで安全性が向上し、階段の使い方に慣れるサポートにもなります。

 

Q:階段の手すりは何段目からつける?

A:基本的には、階段の始まりから終わりまで連続して設置するのが理想的といわれています。

法律上の厳密な段数の規定はありませんが、実用性と安全性を考えると、1段目から最上段まで手を離さずにつかまれる連続手すりが望ましいでしょう。途中で切れていると転倒リスクが高まるため、途切れのない設計がポイントです。

 

Q:バリアフリーの手すりの高さはどのくらいが良い?

A:バリアフリー対応の手すりは、使う方の身長や身体状況に応じて75~80cmを目安に設置するといいでしょう。

高齢者や足腰が弱い方にとっては、無理のない姿勢で握れる高さが重要です。また、階段の勾配や段差との兼ね合いも考慮して調整することが大切です。介護が必要な場合や車椅子と併用する場合は、専門家のアドバイスをもとに設計するのが安心といえるでしょう。

 

【まとめ】家族みんなが安心できる階段手すりは「高さ設計」がカギ

※写真はイメージ(Adobe Stock/maroke)

 

今回の記事では、安全性を確保しながら家族構成やライフスタイルに合った手すりの高さや設計のポイントなどについてご紹介しました。

階段の手すりは、単に設置するだけでなく、使用する人に合わせた高さや仕様を考慮することがとても重要です。小さな子どもや高齢者がいる家庭では特に、安全性と使いやすさの両立が求められます。

法律上の基準を踏まえて、実際の生活動線や家族構成に合った設計を取り入れることで、「安全」と「快適性」を兼ね備えた階段空間が実現するでしょう。失敗や後悔のない家づくりのためにも、施工事例や実際に手すりを使っている家庭の声を参考にしながら、最適な形を考えていけるといいですね。

 

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