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夫婦で考える「バリアフリーのお家」設計のポイントは?将来も安心できる家づくりのコツ

作成者: KIDSKI STYLE編集部|2025/8/19



※写真はイメージ(Adobe Stock/polkadot)

 

これから夫婦で新しいお家を建てる、あるいはリフォームを考えているご家庭。子育てがひと段落し、これからの暮らしを考えたとき、「バリアフリー」という言葉が気になりますよね。

バリアフリー設計は、将来の安心のためだけでなく、今の暮らしをぐっと快適にしてくれるヒントがたくさん詰まっています。

「段差をなくす」「手すりをつける」といった基本的なことだけでなく、毎日の家事が楽になる動線や、賢い収納、ヒートショックを防ぐ工夫など、知っておきたいポイントがたくさんあります。

実は、後からリフォームしようとすると、かえって費用が高くついてしまうこともあります。

だからこそ、お家づくりの計画段階でしっかり取り入れるのがおすすめです。

 

夫婦で考えるバリアフリー設計の必要性

※写真はイメージ(Adobe Stock/taka)

 

「まだ若いからバリアフリーは早いかな?」なんて思っていませんか?でも、お家はこれから何十年も住み続ける大切な場所です。

将来の身体の変化を見据えた家づくりは、実はとっても重要なんです。

国土交通省のデータによると、住み慣れた家の中にも転倒などの危険が潜んでいることが指摘されています。

今から備えておくことで、将来にわたって安心して暮らせるお家になります。

また、バリアフリー設計は、高齢者だけのものではありません。

例えば、妊娠中や子育て中のママ、ケガをしてしまったパパにとっても、段差のない家はすごく暮らしやすくなります。

子育て後の生活や在宅時間が増える中で、バリアフリー設計が快適性を高めることは間違いありません。

そして、一番のポイントはコスト面。一度建てた家のリフォームコストが高額になるため、最初の設計で備えるのが賢い選択です。

壁の中に手すりの下地を入れておくだけでも、将来の工事がぐっと楽になります。早めに計画することで、心にもお財布にも余裕が生まれます。

 

バリアフリー住宅の基本ポイント

「バリアフリーって、具体的に何をすればいいの?」そんな疑問にお答えします!国のガイドラインでも示されている、安全で快適な住まいのための基本的なポイントをご紹介します。 これからお伝えするポイントを押さえるだけで、お家の暮らしやすさが格段にアップしますよ。

 

段差のないフラットフロアでつまずき予防

※写真はイメージ(Adobe Stock/竹澤宏)

 

お家の中で思わぬつまずきの原因となるのが、部屋と廊下の間の敷居ちょっとした段差です。

リビングから洗面所、トイレに至るまで、家全体の床をフラットにすることで、つまずきによる転倒のリスクをぐっと減らせます

これは、将来足腰が弱くなったときだけでなく、小さなお子様がいるご家庭にとっても安心な設計です。

また、段差がないとお掃除ロボットが家中をスムーズに動き回れるので、毎日の家事も楽になりますよ。

 

効果的な手すりの設置で立ち座りを楽に

玄関で靴を履くとき、廊下を歩くとき、トイレで立ち座りするとき、浴室に入るときなど、日々の何気ない動作をそっと支えてくれるのが手すりの役割です。

適切な場所に手すりがあるだけで、体への負担が軽減され、転倒防止に大きく役立ちます。

壁の中に前もって補強の下地を入れておけば、将来必要になったときに好きな場所に手すりを設置できるので、新築やリフォームの際にぜひ検討したいポイントです。

 

開閉が楽な「引き戸」でスムーズな動線を確保

開き戸は、ドアを開けるために一歩下がったり、体をよけたりする必要がありますが、引き戸ならその場でスッと開閉できるため、体の移動が少なくて済みます

特に、床にレールがない「上吊りタイプ」の引き戸は、足元に段差ができず、ホコリも溜まりにくいため、掃除がしやすいというメリットも。

車椅子やベビーカーでの出入りもスムーズになるので、家族みんなにとって快適な空間づくりに繋がります。

 

車椅子も安心な「広めの廊下・ドア幅」(最低80cm以上)

将来、車椅子を使う生活になったときのことを考えて、廊下やドアの幅は少し広めに設計しておくのがおすすめです。

一般的な廊下幅は75cm〜80cm程度ですが、車椅子がスムーズに通ったり、回転したりするためには、国の基準でも最低90cm以上の幅が推奨されています。

この少しのゆとりが、将来の暮らしの安心感に繋がります。介助が必要になった場合でも、二人並んで歩けるスペースが確保できます。

 

ノンスリップ床材や滑りにくい浴室床で転倒リスクを軽減

特に注意したいのが、水に濡れやすい浴室や脱衣所、トイレの床です。

滑りやすい床材は、転倒による大きなケガの原因になりかねません。安全性を第一に考え、表面に凹凸があるなど、滑りにくい加工が施された床材を選びましょう。

最近では、デザイン性が高く、お部屋のインテリアに馴染むノンスリップ床材も増えています。

リビングなども、ワックスが不要で滑りにくいフローリングを選ぶと、より安心です。

 

夫婦のライフスタイルに合わせたバリアフリー動線

※写真はイメージ(Adobe Stock/norinori303)

 

バリアフリーは、ただ安全なだけでなく、夫婦二人の毎日をより楽しく、快適にするための工夫でもあります。ライフスタイルに合わせて、家事や移動がスムーズになる「動線」を考えてみましょう。

 

「家事ラク動線」で毎日の負担を軽減

毎日使うキッチンや洗面所、浴室などの水回りは、家事の効率と安全性に直結する大切な場所です。

例えば、キッチンを壁付けにせず、島のようになっている「アイランド型」にすると、夫婦二人で一緒に料理をしても窮屈に感じません。

また、キッチンの周りをぐるりと回れる「回遊動線」は、車椅子でのアクセスもスムーズにしてくれます。

キッチンから洗面・脱衣所へ直接つながる間取りにすれば、洗濯などの家事も楽になります。

座ったままでも作業ができる高さの調理台など、将来を見据えた工夫がおすすめです。

 

リビング中心のワンフロア設計の安心感

バリアフリーを考える上で、多くの方が理想とするのが階段のない「平屋」です。

生活のすべてがワンフロアで完結するため、階段での転倒リスクがなく、年齢を重ねても安心して暮らせます。

生活動線を水平方向に集約できるため、掃除や家事のための上下移動がなく、体への負担が少ないのも大きなメリットです。

リビングを中心に各部屋を配置すれば、自然と夫婦の会話も弾み、いつもお互いの気配を感じながら過ごせます。

 

「寝室とトイレの近さ」で夜中の移動も安全に

夜中にトイレに起きる際の、暗い廊下での転倒は避けたいものです。

そのため、バリアフリー設計では「寝室とトイレを近くに配置すること」が基本原則とされています。

寝室のすぐ隣にトイレを設けたり、寝室内に専用のトイレと洗面台を設けたりする間取りも人気です。

このひと工夫が、夜間の移動の不安を解消し、ぐっすり眠れる安心感につながります。

ヒートショック対策として、寝室とトイレの温度差をなくすことも大切です。

 

「将来の介護スペース」も考えたゆとりの間取り

今は元気でも、将来のもしもに備えておくことは大切です。

例えば、寝室やリビングの一角に、将来介護用ベッドを置けるスペースをあらかじめ確保しておくと安心です。

具体的には、ベッド本体のスペースに加えて、車椅子で移動したり、介助者が立ったりするためのスペースも必要になります。

6畳ほどの広さがあれば、ゆとりを持った配置が可能です。このように、将来の暮らしの変化にも柔軟に対応できる間取りを考えておきましょう。

 

バリアフリー設計でよくある失敗例と対策

※写真はイメージ(Adobe Stock/ELUTAS)

 

せっかくのマイホーム、「こんなはずじゃなかった…」なんて後悔はしたくないですよね。ここでは、バリアフリー設計で意外とやりがちな失敗例と、その対策をセットでご紹介します。

 

手すりが不要な高さに設置されて使いにくい

【失敗例】

デザイン性を重視したり、一般的な高さで手すりを設置したりした結果、いざ使おうとしたときに「高すぎて力が入らない」「低すぎて不自然な体勢になる」など、かえって使いにくいものになってしまうケースです。 

【対策】

手すりは、実際に使うご夫婦それぞれの身長や体の状態に合わせて、最適な高さを決めることが鉄則です。

設計の段階で、どの場所で、誰が、どのように使うのかを具体的にシミュレーションし、家族みんなにとって本当に「支え」となる高さを見つけましょう。

 

フラットフロアでも素材が滑りやすく転倒リスクがある

【失敗例】

家の中の段差をすべてなくしてフラットにしたのに、見た目がおしゃれなツルツルした床材を選んだため、靴下で歩くと滑りやすく、ヒヤッとすることが増えてしまったという失敗です。 

 

【対策】

床材は、デザインだけでなく「滑りにくさ」という機能面も重視して選びましょう。

特に、水に濡れる可能性のあるキッチンや洗面所、トイレ、浴室は、安全性を最優先に考えたい場所です。

サンプルを取り寄せて、実際に素足やスリッパで歩き心地を確かめてから決めるのがおすすめです。

 

スイッチ・コンセントの高さが不便

【失敗例】

今の暮らしに合わせて一般的な高さにスイッチやコンセントを設置したら、車椅子生活になったり、腰をかがめるのが辛くなったりした時に、手が届きにくく不便になってしまったというケースです。 

 

【対策】

スイッチは、立ったままでも座ったままでも操作しやすいように、少し低めの位置に設定するのがポイントです。

一般的に、照明のスイッチは床から100〜120cmが理想とされています。

逆にコンセントは、屈まなくても抜き差ししやすいよう、少し高めに設置すると、日々の小さなストレスが解消されますよ。

 

浴室・脱衣所の寒暖差

【失敗例】

冬場、暖房の効いた暖かいリビングから、ひんやりと冷えた脱衣所や浴室へ移動した際、急激な温度差で体に大きな負担がかかってしまう「ヒートショック現象」これは命に関わることもある、非常に危険な問題です。 

 

【対策】

ヒートショック対策が必要な場所として、浴室暖房乾燥機を設置して入浴前に浴室内を暖めておいたり、脱衣所に小型の暖房器具を置いたりするなどの工夫が有効です。

また、お家全体の断熱性・気密性を高めることも、根本的な解決策として非常に効果的です。

 

バリアフリー住宅の費用感とコストを抑える方法

※写真はイメージ(Adobe Stock/yuruphoto)

 

「バリアフリーって、やっぱり費用がかかるんでしょう?」と心配な方も多いかもしれません。確かに、特別な設備を追加すれば費用は上がりますが、工夫次第でコストを抑えることも可能です。賢く計画して、理想のお家を実現しましょう。

 

新築でのバリアフリー設計、費用は大きく上がる?

新築の場合、設計の段階からバリアフリーを取り入れるので、実は後からリフォームするよりもコストを抑えられることがほとんどです。

例えば、将来のために廊下やドアの幅を広くしたり、開き戸を引き戸に変更したりといった工夫は、建築のプロセスに組み込んでしまえば追加費用は限定的です。

後から壁を壊して通路を広げるような大掛かりな工事に比べると、費用も手間もぐっと少なくて済みます。

 

部分リフォームの費用目安

もし今のお住まいをリフォームするなら、費用は工事の内容によって様々です。

比較的手軽な手すりの設置なら数万円から可能ですが、トイレを和式から洋式へ交換したり、ユニットバスをバリアフリー対応のものに入れ替えたりすると、数十万円から百万円以上かかることもあります。

どこを、どのレベルまで改修したいのか、優先順位を決めて計画を立てることが大切です。

 

補助金・助成金制度

「バリアフリーにしたいけど、費用が心配…」という方もご安心ください。残念ながら新築で使える補助金はほとんどありませんが、バリアフリーのためのリフォーム(改修工事)を行う場合には、国や自治体の様々な支援制度を活用できることがあります。賢く利用して、費用負担を少しでも軽くしましょう。

 

介護保険の住宅改修費(高齢者住宅改修費用助成制度)

ご家族に要支援・要介護認定を受けている方がいる場合に利用できる、最も代表的な制度です。手すりの設置や段差の解消など、対象となる工事にかかった費用のうち、上限20万円までに対して所得に応じ7〜9割(最大18万円)が支給されます。

 

  • 対象となる主な工事
    • 手すりの取り付け
    • 段差の解消(敷居の撤去、スロープの設置など)
    • 滑り防止のための床材の変更
    • 扉の引き戸などへの交換
    • 和式便器から洋式便器への交換 など
    •  

申請にはケアマネジャーへの相談などが必要になりますので、まずはお住まいの市区町村の介護保険担当窓口や、地域包括支援センターへ問い合わせてみましょう。

 

参考文献: 厚生労働省「介護保険における住宅改修」

 

国の支援事業(子育てエコホーム支援事業など)

国土交通省が実施している、住宅の省エネ化などを支援する事業です。この事業の一環として、開口部の断熱改修やエコ住宅設備の設置などとあわせて行うバリアフリー改修(手すりの設置、段差解消など)も補助金の対象となります。

こちらは要介護認定を受けていない方でも利用できるのが大きなポイントです。年度によって制度の内容が変わることがあるので、国土交通省のホームページで最新情報をチェックするのがおすすめです。

 

参考文献: 国土交通省「子育てエコホーム支援事業」

 

所得税の控除(リフォーム減税)

ご自身が所有し、住んでいる住宅で、一定の条件を満たすバリアフリーリフォームを行った場合に、所得税が戻ってくる(控除される)制度です。

控除を受けるためには、確定申告をする必要があります。

工事内容や費用、合計所得金額など、細かい要件が定められていますので、国税庁のホームページで確認するか、税務署に問い合わせてみましょう。

 

参考文献: 国税庁「No.1220 バリアフリー改修工事をした場合(住宅特定改修特別税額控除)」

 

固定資産税の減額措置

新築から10年以上が経過した住宅で、一定の要件を満たすバリアフリー改修工事を行った場合、その住宅にかかる翌年度分の固定資産税が1年間、3分の1減額される制度です。

こちらも、市区町村への申告が必要です。適用には床面積や工事費用などの要件がありますので、お住まいの市区町村の税務担当課に確認してみましょう。

 

参考文献: 総務省「地方税制度|固定資産税」 (※各税金の概要ページ。詳細は各自治体へお問い合わせください)

 

お住まいの自治体独自の補助金・助成金

上記の国の制度とは別に、市区町村が独自にリフォームに関する補助金や助成金制度を設けている場合があります。

「高齢者向け住宅リフォーム助成」「三世代同居支援」など、自治体によって様々な制度があります。

国の制度と併用できる場合もあるので、工事を計画する前に、まずはお住まいの自治体のホームページでどんな制度があるか調べてみることを強くおすすめします。

 

費用を抑えつつ取り入れる「プチ・バリアフリー」の考え方

今すぐ全てをバリアフリーにするのは予算的に難しい、という方におすすめなのが「プチ・バリアフリー」という考え方です。

例えば、「今は手すりは付けないけれど、将来いつでも設置できるように壁の中に下地だけ入れておく」「開き戸だけど、将来引き戸に交換しやすい構造にしておく」といった備えをしておきます。

それだけでも、将来の本格的なリフォーム費用を大きく削減できる、賢い選択です。

 

バリアフリー設計に取り入れたい設備・アイデア

※写真はイメージ(Adobe Stock/taa22)

 

最新の設備やちょっとしたアイデアを取り入れることで、バリアフリー住宅はもっと快適で安心な空間になります。夫婦の暮らしを豊かにする、おすすめの設備やアイデアをご紹介します。

 

ヒートショックを防ぐ浴室暖房乾燥機

冬場の入浴で怖いのが、暖かい部屋と寒い浴室との温度差で起こる「ヒートショック」

浴室暖房乾燥機は、入浴前に浴室内を暖めておくだけで、体への負担を和らげてくれる必須アイテムです。

体に優しいだけでなく、雨の日に洗濯物を干すのにも使えるので、一年中大活躍してくれます。家事の時短にもつながる、まさに一石二鳥の便利な設備です。

 

センサーライト・自動開閉ドア

夜中にトイレへ行くとき、暗い廊下でスイッチを探すのは意外と大変で、転倒の危険もあります。

人の動きを感知してパッと明かりがつくセンサーライトがあれば、夜中の移動も安心です。

また、玄関ドアなどを自動開閉にすれば、買い物帰りで両手がふさがっている時や、ベビーカーを押している時でもスムーズに出入りができてとても便利です。

 

床暖房や断熱性の高い窓で快適性を確保

足元からじんわりと部屋全体を暖めてくれる床暖房は、エアコンのように風が出ないので、空気が乾燥しにくくホコリも舞い上げにくいのが嬉しいポイントです。

また、断熱性の高い窓は、お家を夏は涼しく、冬は暖かく保ってくれます。

部屋ごとの温度差が少なくなるので、ヒートショックの予防にもつながり、年間の光熱費の節約にもなる、まさに良いこと尽くしの設備です。

 

スマートホーム機能との組み合わせで安心感UP

最近注目のスマートホーム機能も、バリアフリー設計と相性抜群です。

「アレクサ、電気を消して」といった音声操作で照明やテレビをつけたり消したり、スマホで玄関の鍵が閉まっているかを確認したり。

さらには、離れて暮らす家族の見守りサービスと連携することも可能です。日々の暮らしが便利になるだけでなく、家族みんなの「安心」にもつながる、これからの家づくりのスタンダードです。

 

まとめ

※写真はイメージ(Adobe Stock/ohayou!)

 

バリアフリー設計は、決して遠い未来の話や、特別な誰かのためのものではありません。 それは、これからの夫婦の暮らしを、もっと安全で、もっと快適にするための大切な家づくりの要素です。

段差をなくしたり、手すりをつけたりという基本的なことから、家事のしやすい動線、ヒートショックを防ぐ工夫まで、できることはたくさんあります。

そして、早めに計画することで、結果的に費用と将来の手間を抑えられるという大きなメリットもあります。

この記事でご紹介したポイントを参考に、ぜひ夫婦でこれからの暮らしについて話し合ってみてください。そして、一番大切なのは、実際の空間を体感してみることです。

モデルハウスや住宅展示場で、最新のバリアフリー設備や間取りの工夫を実際に見て、触れて、歩いてみることで、きっとお二人の理想の家づくりのイメージが膨らむはずです。



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