【医師監修】子どもの寝付きが悪い原因は?対策法と寝かしつけのコツを解説
※写真はイメージ(Adobe Stock/kapinon)
寝かしつけに毎晩1時間以上かかってしまう、布団に入ると急に元気になるなど、寝付きが悪い子どもに悩むママ・パパは少なくないでしょう。実は、子どもがすぐ眠れないのは親のやり方が悪いせいではなく、睡眠の発達段階や生活リズム、環境が大きく影響しています。
今回の記事では、子どもの寝付きが悪くなる原因から、年齢別の対処法、今日からできる改善ポイントまで、わかりやすくご紹介します。
寝付きが悪い子どもは珍しくない
「なかなか寝ない」「布団に入ってもゴロゴロしている」などの子どもの様子を見ると、不安になってしまうママやパパも多いようですが、寝付きが悪い子どもは決して珍しくありません。実は、子どもの睡眠は大人とは大きく仕組みが違います。
子どもの睡眠発達事情
子どもは大人に比べて眠りが浅く、睡眠サイクルも短いのが特徴です。脳や神経の発達途中にあるため、少しの刺激でも目が覚めやすく、「眠る状態」に入るまでに時間がかかることがあります。これは成長過程として自然なことで、異常ではありません。
「寝ること」は身につけていくスキル
「寝ること」は生まれつき完璧にできるものではなく、後天的に身につけていくスキルといわれています。毎日の生活リズム、寝る前の過ごし方、睡眠環境、そして脳の発達状況など、さまざまな要素が重なって少しずつ整っていくものです。
寝付きが悪くなる背景
※写真はイメージ(Adobe Stock/Paylessimages)
寝付きが悪くなる背景には、以下のような原因がよく見られます。
- 寝る前に興奮する遊びをしている
- 昼寝が長すぎる、または遅い時間までしている
- 日中の運動量が少なく体力が余っている
- スマホやテレビなどの画面刺激を多く受けている
- 寝室の明るさや温度など環境が合っていない
- 不安や甘えたい気持ち、親と離れることへの不安(分離不安)
こうした要因が重なると、子どもは「眠りたいけれど眠れない」状態になってしまいます。
寝ない=問題ではない
大切なのは、「寝ない=問題のある子」ではないという視点です。多くの場合、その子に合った睡眠条件や生活リズムが、まだうまく整っていないだけ。原因を知り、少しずつ環境や習慣を見直していくことで、眠りやすさは改善していく可能性があります。
※こちらの記事も読まれています
【子どもと快適に眠れる寝室設計】おすすめの寝室レイアウトとアイデア
子どもの寝付きが悪い理由は?
子どもがなかなか寝つけない背景にはひとつの原因だけでなく、生活リズムや心の状態、環境など複数の要素が関係していることがほとんどです。
「どうして眠れないのか」を知ることで、今すぐ見直せるポイントが見えてきます。まずは、よくある理由を見てみましょう。
生活リズムが整っていない

※写真はイメージ(Adobe Stock/Ruslan Grumble)
起床時間や昼寝、食事、入浴のタイミングが日によって大きく違うと、体内時計が乱れやすくなります。体内時計が整っていないと、夜になっても眠気がうまく出ず、布団に入っても目が冴えた状態になってしまうでしょう。特に子どもは大人より体内時計の影響を受けやすく、生活リズムの乱れが寝付きの悪さにつながりやすいのが特徴です。
寝る前の刺激過多
寝る直前のスマホやテレビ、動画視聴は、強い光や情報刺激によって脳を覚醒させてしまいます。また、走り回る遊びやテンションが上がる遊びも、気持ちの切り替えを難しくします。眠るためには、脳と体を「休むモード」に切り替える必要があり、刺激の多い時間が続くと、その準備が整わなくなってしまいます。
昼寝が長い・遅い/日中の運動量不足
昼寝が長すぎたり、夕方以降まで昼寝をしていたりすると、夜に十分な眠気がたまらなくなります。また、日中に体を動かす時間が少ないと、体力が余った状態になり、布団に入っても眠くならないことがあるかもしれません。子どもにとって「しっかり遊ぶこと」は、夜の良い眠りにつながる大切な要素です。
不安・甘えたい気持ち・親との分離不安
子どもにとって「寝ること」は、親と離れる時間でもあります。「怖い」「寂しい」「もっと一緒にいたい」といった気持ちが強いと、心が落ち着かず眠りに入れません。特に年齢が低いほど、安心感が睡眠に大きく影響し、心の不安定さが寝付きの悪さとして表れることがあります。
ストレスや生活環境の変化
保育園・幼稚園への入園や進級、引っ越し、兄弟の誕生など、環境の変化は子どもにとって大きなストレスになります。日中は元気に見えていても、夜になると不安や緊張が出て、眠れなくなることも少なくありません。こうした時期の寝付きの悪さは、一時的なものとして見られるケースも多いです。
体質・発達特性(ADHD・ASDなど)
ADHDのある子どもは、興奮しやすく気持ちの切り替えが苦手な傾向があり、眠る準備に時間がかかることがあります。また、睡眠リズムそのものを整えることが難しい場合もあります。ASDのある子どもは、音や光、肌触りなどの刺激に敏感で、寝る前のちょっとした不快感や不安が眠りを妨げることがあります。これらは「しつけ」の問題ではなく、特性によるものです。
寝ない子に何か問題があるのではなく、特性・生活・環境が組み合わさって寝ないという状況が起きています。原因を知ることが、改善への第一歩になります。
寝付きの改善は生活リズムから
子どもの寝付きが悪いとき、まず見直したいのが毎日の生活リズムです。実は「寝る時間」よりも、起きる時間や日中の過ごし方の影響を大きく受けています。少しずつ整えることで、自然な眠気が生まれやすくなります。
起きる時間を固定する
寝付き改善で最も効果的なのは、毎朝の起床時間をできるだけ揃えることです。寝る時間が多少前後しても、起きる時間を一定に保つことで体内時計が整いやすくなります。体内時計が安定すると、夜になると自然に眠気が出やすくなり、寝付きの改善につながるでしょう。
昼寝の目安時間
※写真はイメージ(Adobe Stock/shiro_mofu)
昼寝は成長に必要ですが、長すぎたり遅すぎたりすると夜の眠りに影響します。年齢に応じた目安は以下の通りです。
- 1歳:1〜2時間
- 2歳:1時間程度
- 3歳以降:なし、または短時間
特に夕方以降の昼寝は、夜の眠気を妨げやすいため注意が必要です。昼寝の時間を調整するだけでも、夜の寝付きが改善するケースは少なくありません。
日中の運動・外遊びを増やす
日中にしっかり体を動かすことで、夜に眠くなるリズムが作られます。朝や日中に散歩や公園遊びを取り入れると、体内時計がリセットされ、睡眠ホルモンといわれるメラトニンの分泌が促されやすくなります。激しい運動でなくても、外の光を浴びて体を動かすことが大切です。
夕食〜入浴〜就寝の時間配分
夕食後すぐに寝かせようとすると、消化が活発な状態で眠りに入りにくくなります。夕食は就寝の2〜3時間前までに済ませ、入浴後から寝るまで1〜2時間ほど空けると、体温が自然に下がり眠りやすくなります。この時間帯は、静かな遊びや絵本などでゆったり過ごすのがおすすめです。
寝る前のルーティンづくり
子どもがスムーズに眠るためには、「何時に寝るか」よりも「眠るまでの流れが毎日同じかどうか」が重要です。寝る前の行動を一定の順番で繰り返すことで、脳は「これから眠る時間なんだ」と理解し、自然と気持ちと体が落ち着いていきます。
「いつも同じ流れ」が大切
※写真はイメージ(Adobe Stock/tatsushi)
例えば、お片付け → シャワー → パジャマ → 歯磨き → 絵本 → 電気を消す → おやすみ
といった流れを毎日同じ順番で行うだけでも、眠りへの切り替えがスムーズになります。完璧にこなす必要はなく、「いつも同じ流れ」であることが大切です。
この時間帯は、声かけやスキンシップも意識してみましょう。背中をなでる、手を握る、落ち着いた声で話すなど、ゆっくりした動きと関わりが子どもの安心感につながります。言葉で指示するよりも、雰囲気やリズムで「おやすみモード」を伝えるイメージが効果的です。
切り替えが苦手な子どもは?
ADHD傾向があり、切り替えが苦手な子どもには、視覚スケジュール(作業ボード)を使う方法もおすすめです。「次は何をするのか」が目で見て分かることで、先の見通しが立ち、気持ちの切り替えがしやすくなります。絵や写真を使った簡単なもので十分なので、無理のない形で取り入れてみてください。
寝る前のルーティンは、子どもにとっての安心の合図となります。毎日の積み重ねが、少しずつ寝付きの改善につながっていくでしょう。
子どもが安心できる睡眠環境づくり
子どもがスムーズに眠るためには、心だけでなく寝室の環境そのものも大きく関係しています。大人にとっては気にならない刺激でも、子どもには眠りを妨げる原因になることがあります。安心して眠れる空間を整えることが、寝付き改善の土台になります。
ここからは、子どもが安心できる睡眠環境づくりについてご紹介します。
照明
寝室は、できるだけ真っ暗、または薄暗い間接照明が理想です。明るすぎる照明は脳を覚醒させ、眠気を妨げてしまいます。怖がる場合は、足元を照らす程度の弱い間接照明にし、目に直接光が入らないよう工夫しましょう。
温度・湿度
眠りやすい寝室環境の目安は、室温22〜25℃、湿度50〜60%です。暑すぎたり寒すぎたりすると、寝付きが悪くなったり、途中で目が覚めやすくなります。季節に応じてエアコンや加湿器を使い、快適な状態を保つことが大切です。
布団の素材
※写真はイメージ(Adobe Stock/aijiro)
子どもは寝ている間にたくさん汗をかくため、汗を吸いやすく、体温調節しやすい素材の布団がおすすめです。通気性の悪い素材は蒸れや不快感につながり、眠りを妨げることがあります。肌ざわりの良さも、安心感につながるポイントです。
音
完全な無音がかえって落ち着かない子もいます。その場合は、ホワイトノイズやオルゴール、波の音などの自然音を小さな音量で流すと、周囲の物音をかき消し、安心して眠りやすくなります。毎晩同じ音を使うことで、「眠る合図」としての効果も期待できるでしょう。
刺激を減らす
寝室は「遊ぶ場所」ではなく「眠る場所」と認識させることが大切です。おもちゃや絵本、光るものなど、余計な刺激になる物はできるだけ寝室に置かないようにしましょう。視界に入る情報を減らすことで、自然と気持ちが落ち着き、眠りに入りやすくなります。
寝かしつけのコツと子どもへの声かけ例
子どもを眠らせようとすると、つい言葉でコントロールしようとしてしまいがちですが、寝かしつけで大切なのは指示よりも安心感です。強い言葉や焦りは、子どもの気持ちを逆に覚醒させてしまいます。落ち着いた雰囲気と距離感を意識することが、眠りへの近道です。
声かけの悪い例・良い例
✕ 悪い例
- 「早く寝て!」
- 「もう何時だと思ってるの?」
- 「いい加減にしなさい!」
命令口調や焦りのある言葉は、子どもを緊張させ、気持ちを高ぶらせてしまいます。眠る前に叱られることで、不安や反発が強くなることもあります。
◎ 良い例
- 「もう寝る時間だよ。ママ(パパ)も一緒に横になるね。」
- 「お布団入ろうか。静かにしようね。」
寝ることを“命令”ではなく、一緒にする行動として伝えることで、子どもは安心しやすくなります。
スキンシップと関わり方のポイント
言葉よりも、触れ合いと雰囲気が大切です。背中をトントンしたり、手を握ったりすることで、安心感が伝わります。また、親がゆっくりと呼吸することで、そのリズムが子どもにも伝わり、自然と呼吸が落ち着いていきます。
寝かしつけのときは、たくさん話しかける必要はありません。静かな声、ゆっくりした動き、近くにいる距離感が、子どもに「大丈夫だよ」というメッセージになります。
年齢別の寝かしつけポイント
ここからは、年齢別の寝かしつけのポイントをご紹介します。
0〜1歳
生活リズムを整えつつ、抱っこや添い寝、授乳のリズムで安心感を優先します。まだ自分で気持ちを切り替えることが難しいため、ママやパパの存在がそのまま眠りの助けになります。
2〜3歳

※写真はイメージ(Adobe Stock/milatas)
イヤイヤ期は「自分で決めたい」気持ちが強い時期です。
「布団はこっちにする?それともこっち?」など、選択肢を与える声かけで納得感を持たせると、スムーズに寝かしつけやすくなります。
4〜6歳
理由が理解できる年齢なので、寝る理由を簡単に説明し、ルール化するのが効果的です。
「寝る前は静かにする」「絵本は2冊まで」など、毎日同じルールを繰り返すことで、気持ちの切り替えがしやすくなります。
小学生
スマホやゲームなどの刺激管理が重要になります。使用時間を決めるだけでなく、日中に体を動かす時間をしっかり確保しましょう。また、「睡眠は体と脳を休ませる大切な時間」という睡眠教育の視点で話すことも、理解につながります。
【寝付きが悪くて困ったら】相談した方がいいケース

※写真はイメージ(Adobe Stock/Monet)
寝付きが悪いこと自体は珍しくありませんが、状況によっては専門家に相談した方がよい場合もあります。無理に家庭だけで抱え込まず、「相談することも選択肢のひとつ」と考えてみましょう。
ここからは、相談した方がいいケースについてご紹介します。
毎晩寝るまで2〜3時間以上かかる状態が長期間続く
寝かしつけに2〜3時間以上かかる状態が、数週間〜数か月と続いている場合は、一度相談を検討してもよいサインです。生活リズムや環境を見直しても改善が見られない場合、睡眠の質や発達の観点から専門的なアドバイスが役立つことがあります。
夜驚症・睡眠時無呼吸・激しい不安反応がある
夜中に突然大きな声で泣き叫ぶ夜驚症、いびきや呼吸が止まる様子が見られる睡眠時無呼吸、寝る前に強い恐怖やパニック反応を示す場合は、医療機関への相談をおすすめします。これらは家庭での工夫だけでは対応が難しいケースもあり、早めの受診が安心につながります。
自分や家族が限界・育児疲労が強い
寝かしつけが毎晩続くことで、親や家族が強い疲労やストレスを感じている場合も、相談のタイミングです。「まだ頑張れる」と我慢を重ねるより、外部のサポートを受けることで気持ちが楽になることもあります。親の心と体の余裕は、子どもの安心にもつながるでしょう。
ADHD・ASDなどの発達特性がある場合
発達特性が関係している可能性がある場合は、ADHD・ASDを扱う神経発達専門医や小児科、睡眠外来などに相談するとよいでしょう。また、自治体の保健師や発達相談窓口でも、生活面のアドバイスや支援先の紹介を受けられます。「診断のため」ではなく、「困りごとの整理」のために相談してみるといいでしょう。
【まとめ】寝ない子は「困った子」じゃない。眠りを覚えている途中
※写真はイメージ(Adobe Stock/Jumpei)
今回の記事では、子どもの寝付きが悪くなる原因から、年齢別の対処法、今日からできる改善ポイントまで、わかりやすくご紹介しました。
子どもの寝付きが悪いと、「育て方が悪いのでは」と自分を責めてしまいがちですが、「寝ない子=手がかかる子」ではありません。子どもは成長の中で、少しずつ自分なりの「眠り方」を学んでいる途中にいます。
寝付きの改善は、生活リズムや環境、関わり方を一気に変えることで起きるものではなく、日々の積み重ねで少しずつ表れてきます。できるところから取り入れ、完璧を目指さないことが大切です。
どうしてもつらいときや不安が強いときは、医療機関や専門家に相談することも立派な選択です。眠れない夜が続く時期も、必ず終わりはきます。親も子も安心できる眠りに近づくために、無理のない一歩から始めていきましょう。
監修:保科しほ(恵比寿こどもクリニック)
Profile
日本小児科学会専門医・指導医。麻酔科 標榜医。久留米大学医学部卒業後、横浜市立大学附属病院、国立成育医療研究センター、東京女子医科大学八千代医療センター、国立感染症研究所勤務を経て、医療法人社団 敦保会 恵比寿こどもクリニック院長に就任。専門は小児感染症、小児救急、アレルギー。

