子どもの健康を守る!アレルギー対応住宅の作り方【建材・間取り・換気の工夫まとめ
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「子どものアトピーがなかなか治らない」「子どもが家にいるときにだけ咳き込む」このようなお悩みはありませんか?実は、住まいの環境が子どものアレルギー症状に大きく影響していることがあるようです。
今回の記事では、子どもの健康を守るためにできる【アレルギー対応の住宅づくり】について、建材・設備・間取りなど具体的なポイントをわかりやすく紹介します。
アレルギーと住宅環境の関係は?
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喘息、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎などの子どものアレルギー症状は、住環境の影響を大きく受けることがあるといわれています。住宅の中に潜む主なアレルゲンには、以下のようなものがあります。
ダニ・ハウスダスト
ダニやハウスダストは、カーペット、布団、ぬいぐるみなどの布製品にたまりやすく、アレルギーの大きな原因になるといわれています。
特に湿気が多く、掃除が行き届きにくい場所で繁殖しやすいのが特徴です。小さな子どもは床で遊ぶことが多いため、ダニ・ハウスダスト対策はとても重要です。
カビ
カビは、結露の多い窓まわりや押し入れ、風通しの悪い場所に発生しやすいです。カビの胞子が空気中に舞うことで、喘息やアレルギー性鼻炎などの症状を引き起こすことがあります。特に梅雨時期や冬場の結露対策がカギになります。
花粉
花粉は、洗濯物の取り込みや窓の開閉、換気時に室内へ侵入します。侵入した花粉は家具や床に付着し、室内でもくしゃみや鼻水などの症状を引き起こします。
花粉の季節は、換気方法や洗濯物の干し方を工夫しましょう。
ペットの毛やフケ
ペットの毛やフケは、空気中に舞ったり床や家具に付着したりして、アレルギー症状を悪化させることがあります。特に小さな子どもはペットと触れ合う機会が多いため注意が必要です。
対策としては、飼育スペースを分けたり、こまめな掃除を心がけることでリスクを減らせるでしょう。
シックハウス症候群とは
愛知県衛生研究所によると、シックハウス症候群とは、住宅の建材や内装材、家具などから放出される揮発性有機化合物(VOC)が原因で、さまざまな体調不良を引き起こす症状の総称です。さまざまな体調不良には次のような症状があるといわれています。
・目のかゆみ
・頭痛
・吐き気
・皮膚炎
・喘息 など
シックハウス症候群の主な原因物質には、ホルムアルデヒド、トルエン、キシレンがあり、これらは接着剤、塗料、合板などに多く含まれているといわれています。新築住宅やリフォーム直後の家で起こりやすく、特に小さな子どもやアレルギー体質の子どもは影響を受けやすいため注意が必要です。シックハウス症候群を防ぐためには、VOCフリーの建材選びや十分な換気が大切です。
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アレルギー対策におすすめの住宅建材・設備
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住まいの建材や設備の選び方ひとつで、家族の健康リスクを大きく減らすことができます。特にアレルギー体質の子どもがいる家庭では、素材の安全性や空気環境への配慮が重要です。
VOCフリー(化学物質が少ない)な塗料や接着剤
VOCフリーの塗料や接着剤は、シックハウス症候群の原因となる揮発性有機化合物の放出を大幅に抑えることができます。新築やリフォーム時に使うことで、室内の空気環境をクリーンに保てるでしょう。化学物質に敏感な子どもや赤ちゃんにも安心です。
施工時には、施工会社に「低VOC・無VOC製品」の指定を忘れないようにしましょう。
抗菌・抗アレルゲン対応の床材
床材は子どもが直接触れる機会が多いため、抗菌・抗アレルゲン対応のものを選ぶと安心です。無垢材やコルクなどは自然素材で、ホコリがたまりにくく掃除もしやすいのが特徴です。
さらに表面に静電気が起きにくいため、ハウスダストの付着も防げるでしょう。化学的な加工が少ないものを選ぶことで、より安全性が高まります。
調湿効果のある壁材
珪藻土やエコカラットなどの調湿壁材は、室内の湿気を適度に調整し、カビやダニの繁殖を抑える効果があります。結露が発生しやすい場所に取り入れることで、住環境の質が向上します。
自然素材の風合いがインテリアとしても人気です。健康だけでなく見た目も心地よい空間づくりができます。
防カビ・防ダニ機能のある壁紙や天井材
防カビ・防ダニ機能のある壁紙や天井材は、湿気や汚れが気になる場所におすすめです。これらの素材はアレルゲンの発生を抑え、長期間きれいな状態を保てます。特に子ども部屋や寝室、洗面所まわりなどに選ばれることが多いです。リフォームの際は機能性クロスや天井材のカタログを確認するとよいでしょう。
換気システム(24時間換気、熱交換換気など)
24時間換気や熱交換換気システムは、室内の空気を常に入れ替え、アレルゲンや有害物質を屋外へ排出します。気密性の高い現代の住宅では、特に換気システムが重要な役割を果たします。熱交換型を選べば、冷暖房効率を落とさずに快適な空気環境が保てます。
フィルターの性能やメンテナンスのしやすさも確認しておくといいでしょう。
間取り・設計で工夫できること
アレルギー対策は、建材や設備だけでなく間取りや設計の工夫でも大きな効果が期待できます。毎日の暮らしやすさと清潔な空気環境を両立させる住まいづくりがポイントです。
布製品を減らす工夫(カーテン→ブラインドなど)
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布製品はホコリやダニの温床になりやすいため、なるべく減らす工夫をしましょう。カーテンの代わりにブラインドやロールスクリーンを採用すると、ホコリがたまりにくくお手入れも簡単です。特にアレルギー体質の子どもの寝室やリビングにおすすめです。
掃除やお手入れのしやすさを意識した素材選びが、清潔な空間を保つカギになるでしょう。
ホコリがたまりにくいシンプルな構造
アレルギー対策の基本は「ホコリをためない家づくり」です。
凹凸や装飾の少ないシンプルな構造は、ホコリがたまりにくく掃除がしやすくなります。壁の出っ張りや梁(はり)を減らし、家具も造り付けにすることで隙間のホコリを防げます。掃除の負担が減るだけでなく、室内の空気環境も清潔に保てるでしょう。
窓を多く設けて換気性を確保
間取りの工夫で自然な換気を促すことは、カビや湿気対策に効果的です。窓の位置や数を増やし、風が通りやすい設計にすることで、室内の湿度をコントロールできます。
特に北側や水まわりに小窓を設けると湿気がこもりにくくなります。換気と採光を両立させることで、健康的で快適な住まいが実現できるかもしれません。
ペットのスペースを分ける
ペットを飼っている場合は、ペット専用のスペースを設けることでアレルゲンの広がりを防げます。リビングや寝室とペットスペースを区切ることで、毛やフケが家全体に飛び散りにくくなります。
扉やパーティションを使えば、掃除もしやすく管理がしやすくなります。ペットと家族が安心して暮らせる環境づくりにつながるでしょう。
室内干しスペースを設けて花粉対策
花粉の季節は外干しの洗濯物に花粉が付着しやすいため、室内干しスペースを用意すると安心です。ランドリールームや脱衣所の一角に物干しバーを設置すると便利です。
換気扇や除湿器と組み合わせれば、乾きやすくカビ対策にもなります。毎日の洗濯がストレスなく、健康的に続けられる工夫といえるでしょう。
関連記事:すぐにできるお家の花粉対策は?花粉を防ぐ家づくりの工夫も紹介
子どもが安心して暮らせる環境をつくるには?
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空気環境を整える
子どもが安心して暮らせる家づくりには、空気環境や素材選びへの細やかな配慮が必要です。特に寝室や子ども部屋は、1日の中で長時間過ごす場所だからこそ、空気の清潔さを意識しましょう。
床材はホコリやダニがたまりにくい無垢材やコルクなどを選び、空気清浄機を活用してハウスダストや花粉を除去するのがおすすめです。
断熱性・換気性を高めてカビ対策
洗面所や脱衣所など湿気がこもりやすい場所は、断熱性を高めて結露を防ぎ、十分な換気設備を整えることがポイントです。これによりカビの発生を抑え、清潔で健康的な空間が保てます。
使用する素材にも注意
子どものおもちゃや収納用品の素材選びにも注意しましょう。強いにおいのあるプラスチック製品は、揮発性化学物質が心配される場合もあります。天然素材や低刺激性の製品を選ぶことで、アレルゲンの少ない安心できる空間づくりにつながるでしょう。
新築・注文住宅でできること/リフォームでできること
アレルギー対策は新築や注文住宅だけでなく、今の住まいのリフォームでもしっかりと実現できます。それぞれの方法に合った工夫を知り、家族みんなが安心して暮らせる住環境を整えましょう。
【新築】建材選定・気密性・断熱性から考える
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新築や注文住宅では、家づくりの初期段階からアレルギー対策を取り入れることができます。シックハウス症候群の原因となるVOC(揮発性有機化合物)を含まない塗料や接着剤、天然素材の床や壁材を選ぶことがポイントです。
さらに、気密性や断熱性を高めることで室内の温度・湿度を一定に保ち、結露やカビの発生を抑える効果が期待できます。設計の段階で間取りや換気計画もしっかり検討することで、住み始めてからの健康リスクを最小限に抑えられるでしょう。家族構成やライフスタイルに合わせて、専門家と相談しながら進めるのがおすすめです。
【リフォーム】床の張り替え・換気扇の強化・壁紙変更などが効果的
リフォームでもアレルギーに配慮した住まいへの改善は可能です。床材を無垢材や抗アレルゲン仕様のものに張り替えると、ホコリやダニの温床を減らすことができるでしょう。
また、古い換気扇の交換や24時間換気システムの設置により、室内の空気が常に新鮮に保たれます。防カビ・防ダニ機能のある壁紙に変えるのも効果的で、見た目だけでなく空気環境も改善できます。工事規模に応じて優先順位を決め、無理なく実現できる範囲から始めましょう。
リフォームするなら減税・補助金制度を活用しよう
アレルギー対策リフォームの際は、国や自治体の減税や補助金制度を活用するのも賢い方法です。特に省エネ改修や高断熱化、換気設備の導入は、リフォーム減税の対象となるケースが多いようです。制度を活用することで、家計の負担を抑えつつ健康で快適な住まいづくりが進められるでしょう。バリアフリー改修と組み合わせれば、将来的な安心・安全にもつながります。
具体的な条件や申請方法については、施工会社や自治体の窓口に早めに相談するとよいでしょう。
出典:「リフォーム促進税制(所得税・固定資産税)について」/国土交通省
【まとめ】子どもの健康を守る「やさしい家づくり」を進めよう
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今回の記事では、子どもの健康を守るためにできる「アレルギー対応の住宅づくり」について、建材・設備・間取りなど具体的なポイントをわかりやすく紹介しました。住宅環境は子どもの健康に大きな影響を与えるため、正しい知識を持ち、事前にしっかりと準備することがとても大切です。
新築でもリフォームでも、少しの工夫や設備の選び方次第で、家族みんなが快適に過ごせる住まいが実現できるでしょう。大切なのは、専門家と相談しながら、それぞれの家庭に合った「やさしい家づくり」を一歩ずつ進めていくことです。
安心できる住まいづくりで、子どもたちの毎日をもっと健やかで笑顔あふれるものにしていきましょう。
監修:保科しほ(恵比寿こどもクリニック)
Profile
日本小児科学会専門医・指導医。麻酔科 標榜医。久留米大学医学部卒業後、横浜市立大学附属病院、国立成育医療研究センター、東京女子医科大学八千代医療センター、国立感染症研究所勤務を経て、医療法人社団 敦保会 恵比寿こどもクリニック院長に就任。専門は小児感染症、小児救急、アレルギー。