冷え性対策に効果的な住宅設計のコツ&おすすめ設備まとめ
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「冬になると足元が冷たくてつらい」「暖房をつけてもなかなか部屋が暖まらない」このような冷え性のお悩みはありませんか?家の設計次第で、冷え性のお悩みを大きく改善できます。冷え性は体質だけでなく、住宅の断熱性・気密性・間取りなどが影響しているケースも少なくないようです。
今回の記事では、新築やリフォームを検討中の方に向けて、冷え性対策に効果的な住宅設計のポイントや設備選びのコツ、床暖房や高断熱窓、暖房方式の違いなどについてご紹介します。冷えに悩まない住まいのヒントを、ぜひチェックしてみてください。
住宅設計が冷え性対策に重要な理由は?
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「冷えは万病のもと」といわれるように、日常的な寒さは体調不良や不快感の原因になります。実はこの冷え、体質だけでなく住まいの構造や性能が大きく関係していることをご存じでしょうか?まずは、なぜ住宅設計が冷え性対策に直結するのか詳しく見てみましょう。
住宅の構造が冷えに影響する
冷え性の原因のひとつは、家の構造から侵入する冷気です。床下からの冷気による「底冷え」や、ドア・サッシのわずかなすき間から入る「すきま風」、断熱性の低い窓ガラスから伝わる冷気などが室内温度を下げます。このような問題は、建物の断熱・気密性能が不十分な家ほど顕著に現れるといわれています。
一般的な家と高性能住宅の温度差の違い
従来の一般的な住宅と、断熱・気密に優れた高性能住宅とでは、室内温度に大きな差があります。例えば、外気温が0℃の冬の日でも、高性能住宅では廊下やトイレなどの非暖房空間でも15〜20℃を保てるケースがあるようです。
一方、性能の低い住宅では同じ条件でも10℃以下になることも珍しくなく、体感温度に大きな違いが生まれます。
光熱費と健康リスク
寒さをしのぐために暖房を強めに使えば、光熱費はどんどん高くなり、家計の負担も増してしまいます。さらに、寒暖差の激しい家では、血行不良・肩こり・睡眠の質低下・ヒートショックなど、体調面でのリスクも見逃せません。
住宅の性能を高めて快適な室内環境を保つことは、冷え性対策にとどまらず、健康的な暮らしへの第一歩になります。
冷え性対策に効く住宅設計の基本ポイント
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冷えにくい家をつくるためには、「断熱性」や「気密性」だけでなく、間取りや窓の性能など、住まい全体のバランスを考えることが重要です。
冷え性対策として押さえておきたい住宅設計の基本ポイントをご紹介します。
高断熱・高気密設計にする
冷え性対策の基本は、外気の影響を最小限に抑えることです。そのためには、住宅全体の断熱・気密性能を高める設計にする必要があります。
特に注目したいのが「UA値(外皮平均熱貫流率)」です。「UA値(外皮平均熱貫流率)」は住宅の熱がどれくらい逃げやすいかを示す指標です。数値が低いほど高断熱な住宅といえます。
また、断熱材にも種類があり、吹付ウレタン断熱やセルロースファイバーなど、隙間を埋める性能に優れた素材を選ぶことで、より冷えにくい家になるでしょう。
床断熱&基礎断熱の違いと選び方
床下からの冷気は、体の冷えを感じやすい大きな要因です。その対策としては「床断熱」と「基礎断熱」の2つの工法があります。
床断熱は、床材のすぐ下に断熱材を入れる方法で、一般的な戸建住宅によく用いられます。
一方、基礎断熱は、建物全体の基礎を断熱材で囲う方法で、床下空間も室内と同じような温熱環境にできるメリットがあります。寒冷地や冷え性が気になる家庭には、基礎断熱を検討するのもおすすめです。
窓の断熱性能を高める
窓は住宅の中でも最も熱が出入りしやすい場所です。単板ガラスやアルミサッシのままだと、いくら室内を暖めても冷気が伝わってしまいます。
対策としては、複層ガラス(ペアガラス)や樹脂サッシ、内窓(二重窓)の導入が有効です。これらを採用することで、断熱性能が大幅に向上し、窓際でも冷えを感じにくい空間をつくることができるでしょう。結露防止にもつながるため、快適性とメンテナンス性の両面でメリットがあります。
間取りの工夫で冷気を防ぐ
冷気の侵入を防ぐためには、建物の配置や間取りの工夫も重要です。例えば、玄関や階段がリビングと直結していると、外気や上下階の温度差がダイレクトに伝わってしまう可能性があります。
リビング階段を採用する場合は、ドアを設ける・吹き抜けを最小限にするなど、冷気が広がりにくい工夫を取り入れましょう。
また、寝室や浴室は日当たりのよい南面に配置することで、太陽熱を活用し自然な暖かさを確保することができます。
冷え性にやさしい暖房システム
「暖房をつけているのに手足が冷たい」「頭はのぼせるのに足元は寒い」など冷え性特有のお悩みには、体を芯から暖められる暖房選びが重要です。
ここからは、冷え性にやさしい代表的な暖房システムとその特徴について見てみましょう。
床暖房の種類(温水式・電気式)とメリット
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床暖房は、足元からじんわりと部屋全体を暖める冷え性に特にやさしい暖房方式です。床暖房の方式には「温水式」と「電気式」があり、どちらも空気を乾燥させにくいという特長があります。
温水式はボイラーなどで温めたお湯を床下のパイプに循環させるタイプで、ランニングコストが比較的安く、広い範囲にも対応可能です。電気式は電熱線を使って直接床を温める方式で、初期費用が安く、部分的な設置にも向いています。
冷え性の方には、寝室や洗面脱衣所などピンポイントで導入するのもおすすめです。
全館空調 vs 部分暖房の比較
冷え性対策には、「全館空調」のように家全体を一定の温度で保つ方式が非常に効果的です。廊下やトイレ、洗面所も含めて温度差が少ないため、寒暖差による冷えを防ぎやすくなります。
一方、部分暖房(エアコン・ストーブなど)は、設置コストやエネルギー消費を抑えやすい反面、暖かい部屋と寒い部屋の差が大きくなりやすいというデメリットもあるようです。
冷え性がつらい方は、生活動線に合わせて全館空調+床暖房などのハイブリッド型も検討してみるといいかもしれません。
蓄熱暖房器・パネルヒーター・ペレットストーブなど選択肢
冷え性の方に優しい暖房機器には、空気を汚さずじんわりと空間を暖めるタイプが多くあります。例えば、蓄熱暖房器は深夜電力で蓄えた熱を放出し続けるタイプで、長時間にわたって部屋を安定して暖められるのが特長です。
パネルヒーターは壁に設置して低温で輻射熱を発するため、乾燥やホコリの舞い上がりが少なく、敏感肌や呼吸器が弱い方にもいいでしょう。
ペレットストーブは自然素材の木質ペレットを燃料に使い、心地よい炎のぬくもりと視覚的な癒しも得られます。
エアコンで冷えにくくするための使い方
エアコンは手軽で効率的な暖房機器ですが、風が顔に当たる・足元が冷えるなどの冷え性対策には不向きな面もあります。しかし、使い方を工夫すれば冷え対策にも活用可能です。例えば、風向きを水平または下向きに設定し、サーキュレーターで空気を循環させることで、部屋全体の温度ムラをなくすことができるでしょう。
また、設定温度を20~22℃前後に保ち、過乾燥を防ぐために加湿器を併用するのもポイントです。エアコン+部分床暖房の組み合わせも冷え性対策に有効です。
冷えを感じにくくする内装・素材の工夫
住宅の断熱性や暖房設備が整っていても、床や窓際が冷たければ冷え性にはつらい環境になってしまうでしょう。そんなときは、内装材やインテリアを工夫することで、体感温度を上げることが可能です。素材選びやレイアウトの工夫をチェックして、より快適な住まいに近づけましょう。
無垢フローリング vs フロアタイル
床材によって、足元から伝わる冷たさには大きな差があります。例えば、無垢フローリング(天然木)は断熱性・調湿性が高く、素足で触れてもヒヤッとしにくいという特徴があります。
一方、フロアタイルや合板フローリングなどの化学系素材は、見た目が木目調でも熱伝導率が高く、冷たさを感じやすい傾向があります。
冷え性対策としては、自然素材を活用した床材を選ぶのがおすすめです。
カーペット・ラグ・畳の活用
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足元の冷えを和らげたいときは、カーペットやラグ、畳などの敷物を上手に使うのが効果的です。
特にラグは、部屋の一部にアクセントとして取り入れながら断熱・保温性も高められるアイテムです。厚手で密度の高い素材を選ぶと、床からの冷気をより遮断できます。
また、和室の畳も断熱性とクッション性を兼ね備えた伝統的な冷え対策素材のひとつです。見直されつつある畳スペースを一部に取り入れるのも、快適な冬の暮らしにつながるでしょう。
断熱カーテン・厚手のカーテンで窓際冷気を防ぐ
窓際の冷気を防ぐには、断熱効果のあるカーテンの活用が効果的です。特に冬場は、暖房していても窓から冷気が伝わり、体感温度が下がってしまいます。
その対策として、断熱カーテンや裏地付きの厚手カーテンを使えば、窓辺からの冷え込みをしっかりブロックできます。カーテンは床までしっかり届く丈にするのが理想で、すき間を防ぐタッセルやカーテンボックスとの併用もおすすめです。遮熱と保温を兼ねた多機能カーテンを選ぶことで、冷え性対策と省エネ効果を同時に得られるでしょう。
リフォームでもできる冷え性対策
「今の家は寒いけど、建て替えるのは難しい…」という方でも、リフォームで冷え性対策を実現することが可能です。リフォームでもできる冷え性対策について詳しく見てみましょう。部分的なリフォームでも効果的な改善が期待できるため、住みながらの寒さ対策にもおすすめです。
内窓(二重サッシ)設置
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窓は住宅の中でも最も熱の出入りが激しい場所です。既存の窓に「内窓」を追加するリフォームなら、断熱性を大きく向上させることができるでしょう。
内窓(二重サッシ)は、今ある窓の内側にもう一枚窓を設置するもので、空気の層が断熱材の役割を果たし、冷気や結露を軽減します。工事も比較的簡単で、一窓あたり1〜2時間程度で完了するケースが多く、費用対効果の高いリフォームとして人気のようです。
床暖房の後付け
「冬の床が冷たくてつらい」という悩みには、床暖房の後付けリフォームが有効です。リビングやキッチンなど、長時間過ごす場所を部分的に暖めることで、冷え性の負担を軽減できます。
既存の床を一部はがして施工する必要がありますが、最近では薄型の電気式床暖房パネルなど、リフォーム向けの商品も充実しています。床材の張り替えと合わせて行えば、見た目も一新できる点が魅力です。
壁・床・天井への断熱材追加
住まい全体の断熱性を底上げしたい場合は、壁・床・天井などに断熱材を追加するリフォームが有効です。特に築年数が古い住宅では、断熱材が入っていない・性能が不足していることも多く、冷えの根本原因になっているケースもあるようです。
断熱材の追加は、工事規模がやや大きくなることもありますが、家全体の保温性が高まり、冷暖房効率の向上・光熱費の節約にもつながります。そのため、長期的に見るとコストパフォーマンスの良い対策といえるでしょう。
暖房設備の見直し
既存の暖房器具だけでは寒さをしのげない場合は、暖房設備そのものを見直すことも検討しましょう。例えば、古いエアコンから最新型の省エネモデルに交換するだけでも、暖房効率は大幅にアップします。また、パネルヒーターの導入や、サブ暖房としてのペレットストーブの設置などを取り入れるのもいいでしょう。
間取りや使用頻度に合わせて、ライフスタイルに合った暖房計画を再構築することで、より快適な冬の暮らしが実現できます。
【まとめ】住まいの工夫で冷え性を根本から改善しよう
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今回の記事では、新築やリフォームを検討中の方に向けて、冷え性対策に効果的な住宅設計のポイントや設備選びのコツ、床暖房や高断熱窓、暖房方式の違いなどについてご紹介しました。
冷え性は体質によるものと思われがちですが、実は住宅環境の影響も大きいことがわかっています。断熱性や気密性、暖房の仕組み、さらには間取りの工夫など、住宅設計を見直すことで冷えにくい住まいを実現することができます。
新築はもちろん、既存の住宅でも内窓の設置や床暖房の後付けといったリフォームによる対策もとても効果があります。設備や素材、設計をトータルで考えることで、冷え性に悩まされないポカポカと快適な住まいを叶えることができるでしょう。
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