不登校の子どもにできる親の対応は?正しい接し方とNG行動

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「突然、子どもが学校に行けなくなった」「どう接すればいいのかわからない」などの不安を抱えていませんか?不登校は今、決して珍しいことではなく、多くの家庭が直面している問題です。大切なのは、親が焦らず、正しい知識と関わり方を知ることといえるでしょう。
今回の記事では、不登校の子どもにできる親の対応、避けたいNG行動、回復へのステップや相談先まで、具体的にわかりやすくご紹介します。
不登校は珍しいことではない

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子どもが学校に行けなくなると、「うちだけおかしいの?」「親の育て方が悪かったのでは」と自分を責めてしまう方が少なくないようです。ですが、まず知っておいてほしいのは、不登校は今や特別なことではないという事実です。
文部科学省が2025年に公表したデータによると、全国の小・中学校における不登校の児童生徒数は約35万人と過去最多を記録しました。これは、どの学校・どの地域でも起こりうる、社会全体の課題です。つまり、不登校は「家庭の問題」でも「親の責任」でもありません。
子どもが学校に行けなくなる背景には、単なる怠けではなく、さまざまな心理的要因があるようです。例えば、学校や友人関係への不安、ストレスによる体調不良、無気力や疲れなど、心のエネルギーが限界を迎えている状態といえるでしょう。
不登校は「終わり」ではなく、「回復への途中経過」といえます。まずは、親がこの現実を正しく受け止め、子どもの心を守ることから始めていきましょう。
参考:文部科学省「令和6年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果の概要」
不登校の子どもに親がやってはいけない対応
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不登校の子どもに接するとき、親の焦りや心配からつい言葉がきつくなってしまうことがあります。ですが、悪気のない一言が、子どもの心をさらに追い詰めてしまうこともあるかもしれません。
ここからは、やってしまいがちな対応とその理由を整理してみましょう。
「なぜ行けないの?」
行けない理由を自分でも整理できないことが多く、この質問はプレッシャーになります。言葉にできない苦しみを責められたように感じ、さらに黙り込んでしまうかもしれません。
「甘えてるだけでしょ」
「自分は弱い」「ダメな人間なんだ」と自己否定につながりやすい言葉といわれています。不登校は“怠け”ではなく、心が疲れて助けを求めているサインかもしれません。まずは「つらいね」と受け止めてあげましょう。
「友達はちゃんと行ってるよ」
他人との比較は、子どもの自己価値を大きく下げてしまうでしょう。「どうせ私なんて」と感じることで、回復までの道のりが遠くなってしまうかもしれません。比べるのではなく、その子自身のペースを尊重することが大切です。
急かす・説得・無理に引っ張る
「行かせなきゃ」という思いから、つい行動を促したくなりますが、無理に動かそうとすると回避傾向が強まり、ますます登校へのハードルが上がってしまうといわれています。まずは「休むことを受け入れる」姿勢が、回復の第一歩かもしれません。
たとえ今までにこうした言葉をかけてしまっていたとしても、自分を責める必要はありません。誰もが初めてのことで、試行錯誤しながら子どもと向き合っています。今日から少しずつ、関わり方を変えてみるといいかもしれません。
不登校の子どもに親ができる対応
不登校の子どもに向き合うとき、親は「何とかしなければ」と焦ってしまうこともあるでしょう。しかし大切なのは、行動を変えさせることよりも、まず心の回復を最優先にすることです。
ここからは、子どもが再び前を向く力を取り戻すために、親ができる具体的な関わり方をご紹介します。
焦らせない・調子を見ながら見守る
不登校の初期やつらい時期には、無理に行動を促さず、心が休まる時間を確保することが何より重要といわれています。
「いつ学校に行くの?」と結果を急がれるほど、子どもは追い詰められてしまいます。
「学校は今は休んでいい」「あなたは大丈夫だよ」と伝え、安心して立ち止まれる状態を作ることが、回復への土台になるでしょう。
子どもとの信頼関係を築く
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不登校の背景には、言葉にできない不安や苦しさがあることが多くあります。親は怒ったり正論をぶつけるのではなく、「聴く姿勢」を示すといいでしょう。
例えば、
- 「行けない気持ちを聞かせてくれてありがとう」
- 「話したくない時は無理しなくていいよ」
このような言葉は、「否定されない」「受け止めてもらえる」という安心感につながり、信頼関係を深めるでしょう。
家庭を安全基地にする(心理的安全性)
家庭は、子どもが心を回復させるための“安全基地”である必要があるといわれています。
責められる場所、不安をぶつけられる場所ではなく、「何もできなくても受け入れてもらえる場所」であることが重要です。
生活リズムを大きく崩さない工夫や、家庭内の空気を穏やかに保つこと、笑顔や余白時間を意識的に増やすことが、安心感につながるかもしれません。
甘えを受け入れる
不登校の子どもが見せる甘えは、依存ではありません。
それは「安心したい」「守られていると感じたい」という自然な心の反応です。
寝るときに一緒に過ごす、ハグをする、そばに座るなど、小さな関わりの積み重ねが、子どもの心をゆっくり安定させていきます。
適切な学習支援
不登校=学びが止まる、というわけではありません。オンライン学習、家庭学習、フリースクールなど、学校以外にも学びの選択肢はあります。
大切なのは「今すぐ学校に戻すこと」ではなく、本人に合った形で学び続けられる環境を整えることです。子どものペースや気持ちを尊重しながら、選択肢を一緒に考えていくといいでしょう。
不登校の子どもが前に進むためのステップと回復のサイン
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不登校の回復は、一気に「学校に行けるようになる」ものではありません。心と体のエネルギーを取り戻しながら、少しずつ段階を踏んで前に進んでいくプロセスがあるといわれています。親がこの流れを理解しておくことで、焦らずに子どもを支えることができるでしょう。
前に進むためのステップ例
1.休息期(何もできない)
休息期の子どもは、心も体も限界まで疲れており、学校のことを考える余裕はないでしょう。眠る・ぼーっとする・ゲームや動画に没頭するなど、何もしていないように見える行動も「回復の準備期間」といえます。親は焦らず、「今はしっかり休む時期」と受け止めましょう。
2. 安定期(生活リズム回復)
心のエネルギーが少し戻り、子どもの表情や反応に変化が見られ始める時期です。笑顔が増えたり、好きなことに少しずつ取り組めるようになったりするかもしれません。食事や睡眠のリズムが整い始めたら、それは確かな回復のサインです。無理に次の行動を促さず、安定を保つことを大切にしましょう。
3. 探求期(選択肢を考えられる)
エネルギーが戻ってくると、子どもは自分なりに「次にどうしたいか」を考え始めるといわれています。学校に戻る、フリースクールに通う、オンライン学習を試すなど、さまざまな選択肢が視野に入る段階です。この時期は、親が「どれを選んでも応援するよ」というスタンスで、安心して選べる環境を作ってあげましょう。
4. 再スタート期(行動できる段階)
心と体の準備が整い、実際に行動に移せるようになる段階です。登校を再開したり、新しい学び場に通い始めたりと、少しずつ社会とのつながりを取り戻していくでしょう。
ただし、再スタートには波があるのが自然です。うまくいかない日があっても責めず、「また次がある」と寄り添いながら見守る姿勢が大切です。
回復のサイン
子どもの回復は、行動だけでなく表情や雰囲気にも表れます。表情が柔らかくなったり、「遊びたい」「話したい」と自発的に動くようになったりしたら、心が前を向き始めた証拠です。また、興味や関心が戻ったり、生活リズムが少しずつ整うのも大切なサインといえます。
不登校の回復には時間がかかりますが、その歩みは確実に進んでいます。大切なのは、子どものペースを尊重し、「今のあなたで大丈夫」と伝え続けること。焦らず見守ることが、何よりのサポートとなるでしょう。
不登校が辛いときの親側の心のケア

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子どもが不登校になると、親もまた深い不安や孤独、そして「自分のせいではないか」という罪悪感を抱えがちになってしまうことが多いでしょう。けれど、それはごく自然な感情です。親も人間であり、戸惑いや疲れを感じて当然です。だからこそ、子どもと同じように親自身のケアも重要です。
まず大切なのは、1人で抱え込まないこと。不登校の悩みはとても繊細で、誰にも言えずに心の中で膨らんでいくことがあるかもしれません。信頼できる友人や家族、同じ経験を持つ親の会などに話すことで、気持ちが整理され、安心を取り戻せることがあります。
そして、自分の時間を持つことも忘れないでください。散歩をする、好きな音楽を聴く、コーヒーをゆっくり飲むなど、小さな休息で心は少しずつ回復していきます。「子どものために」と頑張りすぎてしまう親ほど、自分の疲れに気づきにくいもの。意識的に休むことが、結果的に子どもの支えになるでしょう。
親の心が安定すると、子どもは自然と安心し、回復に向かっていけるようになります。子どもの笑顔を取り戻すためにも、まずはあなた自身を大切にしてください。
不登校の相談先・支援サービス
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「どこに相談すればいいかわからない」「相談したら登校を強制されそう」と不安に感じる方も多いかもしれません。けれど相談は「問題を解決するための最後の手段」ではなく、「子どもの選択肢を増やすサポート」です。専門機関に話をすることで、家庭では見えなかった可能性が広がることもあります。
ここからは、主な相談・支援先をご紹介します。
教育支援センター
各自治体が運営している公的な学びの場で、学校に行けない子どもたちが安心して過ごせる場所です。学習支援だけでなく、生活リズムの回復や社会とのつながりをサポートしてくれます。担当の先生やカウンセラーが、学校復帰だけでなく「その子に合った進路」も一緒に考えてくれます。費用は無料または低額で、初めての相談にも向いているといわれています。
スクールカウンセラー
学校に配置されている心理の専門家で、児童・生徒や保護者が気軽に相談できる存在です。「不登校=登校しなければいけない」というプレッシャーを与えることはなく、子どもの気持ちに寄り添いながら現状を整理してくれるでしょう。面談は無料で受けられることが多く、先生への伝え方や学校との調整についても相談できるようです。
フリースクール
学校に代わる学びの場として全国に広がっている施設です。登校を前提にせず、子どものペースに合わせて過ごせるのが特徴で、勉強だけでなく趣味・交流・体験活動などを通して自己肯定感を育てられるでしょう。「学校に戻る」よりも「自分らしく学ぶ」ことを重視しており、子どもが笑顔を取り戻すきっかけにもなるかもしれません。
民間の不登校支援団体
カウンセリングや家庭訪問、親の会などを行っている民間の団体もあります。経験豊富なスタッフが、不登校の原因や家庭での対応方法を具体的にアドバイスしてくれるのが特徴といわれています。親同士で悩みを共有できる「親の会」は、孤独を和らげる大切な場になるでしょう。地域の支援ネットワークやオンライン相談を活用してみるのもおすすめです。
オンラインカウンセリング
外出が難しい場合や、対面相談に抵抗がある人には、オンラインカウンセリングが便利です。ビデオ通話やチャットを使って、自宅から気軽に専門家と話すことができるようです。匿名相談ができるサービスも多く、時間や場所を気にせず利用できるのが魅力です。親がまず相談して気持ちを整理するだけでも、十分に意味があるでしょう。
どちらの相談先も、「行ってみる=決断」ではありません。情報を集め、話を聞いてみるだけでも構いません。小さな一歩を踏み出すことで、親も子も少しずつ安心を取り戻し、次のステップへとつながっていくでしょう。
【まとめ】不登校は“終わり”ではなく、“回復へのプロセス”
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今回の記事では、不登校の子どもにできる親の対応、避けたいNG行動、回復へのステップや相談先などについてご紹介しました。
子どもが学校に行けなくなることは、決して「終わり」ではありません。それは、心と体を立て直し、次のステージへ進むための大切なプロセスです。
不登校の期間は、親子の絆を見つめ直す時間ともいえます。家庭が安心できる場所であれば、子どもは必ず少しずつ前へ進んでいくでしょう。今日できることは、責めることではなく、信じて待つこと。あなたの穏やかな笑顔が、子どもにとって何よりの力になります。
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