夫婦2人だけの暮らし【持ち家 or 賃貸】どっちがベスト?最適な住まい選びのコツ

※写真はイメージ(Adobe Stock/miya227)

 

持ち家か、それとも賃貸か。この問いに万人に共通する「正解」はありません。しかし、夫婦2人の価値観、経済状況、そして将来のビジョンに深く合致した「最適な選択」を見つけるための、判断軸は存在します。

本記事では、住まいを金融資産として捉える視点、ライフスタイルを豊かにするカスタマイズの価値、そして長期的な安心という観点から、お二人が心からの「納得感」を持って決断を下すための情報をお伝えします。

 

夫婦だけの暮らしにおける「住まい選び」の考え方

※写真はイメージ(Adobe Stock/naka)

 

子どもがいない夫婦の住まい選びは、子育て世帯のそれとは根本的に異なります。「家族の成長に対応する器」ではなく、「夫婦2人の現在と未来の生活の質を大切にする家」へと役割が変わるのです。

従来の「3LDKファミリータイプ」といった固定観念から離れ、お二人の暮らしに本当に必要なものは何かを考える必要があります。

住まい選びの軸となるのは、夫婦それぞれが大切にしている価値観です。資産志向なら将来の資産形成重視、自由志向なら移住の自由度優先、趣味・ライフスタイル優先なら理想の空間づくりが目的となるでしょう。

ライフステージが変動しにくい分、長期的な快適性と管理のしやすさが重要になります。新築、リノベーション、コンパクトな平屋という選択も、この価値観の軸に基づいて検討すべきです。

通勤時間、大人向け施設の近さ、許容できる管理の手間など譲れない条件を具体的に話し合うことが、後悔のない選択につながります。

 

持ち家のメリット・デメリットは?

持ち家を選択することは、単に住居を所有する以上の意味を持ちます。経済的な側面から心理的な側面に至るまで、そのメリットとデメリットを深く理解することが重要です。

メリット

※写真はイメージ(Adobe Stock/naka)

資産形成と老後の居住安定

持ち家の最大のメリットは、住宅ローンを完済すれば家賃の支払いがなくなり、老後の固定費を劇的に削減できる点です。

これは単なる節約以上の意味を持ちます。日本では、高齢者が賃貸物件を借りにくいという厳しい現実があります。

家主は孤独死による事故物件化のリスク、年金収入の不安定さ、連帯保証人の不在などを懸念し、高齢者への賃貸をためらう傾向が強いのです。

持ち家は、こうした将来の居住不安に対する極めて有効なリスク管理手段となり、売却して資金化したり、リバースモーゲージの担保にしたりすることも可能な、確固たる資産となります。

 

空間の自由なカスタマイズ

賃貸物件とは異なり、所有者は自らのライフスタイルに合わせて空間を自由に改装・設計できます。

特に、経済的に余裕のあるDINKs(Double Income No Kids)にとって、この利点は大きいでしょう。

例えば、防音仕様の趣味室やそれぞれのワークスペースを作る、友人を招くためのアイランドキッチンを導入する、ペットが快適に暮らせるように床材や動線を工夫するなど、理想の空間を追求できます。

 

心理的な安定感「自分の城」

数値化できないメリットとして、「自分の城」を持つことによる心理的な安定感も挙げられます。

地に足をつけ、腰を据えて生活の基盤を築いているという感覚は、日々の暮らしに充足感をもたらすでしょう。

 

デメリット

維持コストの継続的発生

住宅ローン以外にも、持ち家には継続的なコストが伴います。毎年課される固定資産税・都市計画税、マンションの場合は管理費や修繕積立金が毎月発生します。

例えば首都圏のマンションでは、管理費と修繕積立金の合計額は月平均で約2万5000円、固定資産税は物件にもよりますが年間10万円から30万円程度が目安となります。

こうした費用は、ローン完済後も生涯続きます。

 

引越しが難しくなる可能性も

持ち家は特定の場所に縛られることを意味します。

急な転勤や、より魅力的なキャリアの機会が他の地域に生まれた場合、簡単には動けません

家の売却には時間もコストもかかり、キャリアの柔軟性を重視する夫婦にとっては大きな足かせとなり得ます。

 

住宅ローン返済リスク

夫婦の合算収入を前提に高額なローンを組んだ場合、どちらか一方の病気や失業による収入減は、家計に深刻な打撃を与えます。

これは多くの人が抱える大きな不安要素です。

 

資産価値下落リスク

購入した家が将来、その価値を維持できるとは限りません。

立地や経済状況によっては価値が下落し、ローン残高が売却価格を上回る「残債割れ」に陥るリスクもあります。

このリスクは、購入時の立地選定に大きく左右されます。

 

賃貸のメリット・デメリットは?

一方で、賃貸には持ち家にはない身軽さと柔軟性があります。しかし、その自由さには相応の代償も伴います。

メリット

※写真はイメージ(Adobe Stock/あんみつ姫)

気軽に住み替えができる

賃貸の最大の魅力は、ライフステージや心境の変化に合わせて気軽に住み替えられる点です。

転勤、転職、海外移住、あるいは単に「この街に飽きた」という理由でさえ、住まいを変えることができます。

「家賃はもったいない」という見方もありますが、キャリアやライフステージの柔軟性への投資と捉えることもできます。

 

メンテナンス責任の不在と初期費用の低さ

給湯器の故障や建物の修繕などは、基本的に大家の責任と費用で行われます。

これにより、予期せぬ出費や管理の手間から解放されます。

また、初期費用も敷金・礼金程度で、持ち家の頭金や諸費用に比べて格段に少ないのが特徴です。

 

デメリット

家賃を生涯払い続ける負担

最も明白なデメリットは、支払いが永遠に終わらないことです。

例えば月15万円の家賃を40年間払い続ければ、総額は7,200万円にも上ります。

この「もったいない」という感覚は、多くの人が賃貸をためらう大きな理由です。

 

リフォームや間取りなどの制約

リフォームやDIY、ペットの飼育などに厳しい制限があるのが一般的です。

ライフスタイルにこだわり、自分たちらしい空間を創りたい夫婦にとって、これは大きな制約となります。

 

高齢期の「借りにくさ」という最大のリスク

これが賃貸における最大かつ最も深刻なリスクです。前述の通り、高齢になると家主から入居を敬遠されるケースが増えます

保証人となってくれる兄弟も高齢であったり、既に亡くなっていたりする可能性も高く、保証人の確保も困難になります。

ただし、このリスクには具体的な対策も存在します。

その代表格が、独立行政法人都市再生機構が運営する「UR賃貸住宅」です。UR賃貸は、礼金・仲介手数料・更新料が不要なだけでなく、入居審査で年齢を理由に断られることがなく、保証人も必要ありません。

バリアフリー仕様の物件も増えており、高齢期の居住不安を解消する有力な選択肢として知っておくべきです。

 

持ち家or賃貸、どちらが向いているかチェック!

ここまでの分析を踏まえ、ご自身たちがどちらのタイプに近いかを確認してみましょう。

夫婦の価値観を可視化し、話し合いを深めてみましょう。

 

持ち家が向いている夫婦

※写真はイメージ(Adobe Stock/mapo)

 

住宅購入を検討すべき価値観として、まず空間へのこだわりが強い場合が挙げられます。

インテリアや間取りを自分たちで自由に設計し、趣味のための特別な空間である防音室やアトリエなどを創りたいと考えている夫婦には、購入が適している選択といえるでしょう。

次に地理的な安定を望む場合も購入向きです。現在の職場や生活圏に満足しており、転勤の可能性が低く、長期的に同じ地域に住み続けることを想定している状況では、購入による安定した住環境の確保が有効です。

また資産形成と老後の安心を優先する価値観も重要な要素です。家を退職後の重要な資産と位置づけ、ローンを完済することで将来の住居費を固定化し、経済的な安心を得たいと考えている場合、購入は理にかなった選択となります。

これらの価値観に当てはまる夫婦にとって、住宅購入は長期的な満足と安定をもたらす投資といえるでしょう。

 

賃貸が向いている夫婦

まずキャリアの流動性を重視する場合が挙げられます。

転職や転勤、海外移住などを積極的に考えており、住む場所はキャリアに合わせて柔軟に変えていきたいと考えている夫婦にとって、賃貸は理想的な選択肢となります。

将来の不確定要素が多い状況も賃貸向きです。

子どもを持つかどうかまだ迷っている、あるいは今後の収入や二人の関係性に不確定な部分があると感じている場合、購入による長期的なコミットメントは負担となる可能性があります。

身軽さと経験を重視する価値観も重要な要素です。

不動産に資本を固定するよりも、旅行や自己投資といった「経験」や、株式など流動性の高い金融資産に資金を投じたいと考え、管理の手間が少ない身軽な生活を好む夫婦には、賃貸が最適な住居形態といえるでしょう。

 

判断に迷ったときのチェックポイントと考え方

※写真はイメージ(Adobe Stock/yuz)

 

感情やイメージだけでなく、客観的なデータと長期的な視点を持つことが、最終的な判断を下す上で不可欠です。

 

それぞれの「住宅費の目安」を考える

持ち家と賃貸、どちらを選ぶにしても継続的な住居費が発生します。その内訳を理解することは、冷静な判断の第一歩です。

 

持ち家の場合

住宅ローンの返済に加え、毎年課される固定資産税・都市計画税、そしてマンションであれば管理費と修繕積立金が継続的にかかります。

首都圏のマンションを例に挙げると、管理費と修繕積立金の合計は月額平均で24,738円というデータがあります。

固定資産税は物件の評価額によりますが、年間10万円から30万円程度が一般的な目安です 。  

賃貸の場合

毎月の家賃に加え、多くの物件では2年ごとに「更新料」が発生します。首都圏では家賃の1ヶ月分が相場とされており、家賃15万円なら15万円の更新料が必要になる計算です 。  

これらの費用を念頭に置き、自分たちの収入に対して無理のない範囲かを検討することが重要です。

 

購入 vs 賃貸の支出比較(20年・30年)

賃貸に20年間住み続けたケースと、持ち家を購入して20年目に売却した場合を比較してみます。

まず賃貸の場合、月々の家賃15万円で20年間住み続けた場合の総コストは3,600万円となり、資産は残らないので実質的な住宅コストも3,600万円です。

一方、5,000万円の物件をローン購入(金利1.0%・35年返済)した場合、月々約14万円の返済で20年間の支出は3,360万円、20年後のローン残債は2,250万円となります。

この物件を20年後に売却する場合、価格維持なら5,000万円で売却して実質住宅コストは610万円、30%値下がりなら3,500万円で売却して実質住宅コストは2,110万円、50%値下がりなら2,500万円で売却して実質住宅コストは3,110万円となります。

賃貸はすべて掛け捨てですが、持ち家は資産への積み立てとなるため、大幅に値下がりしても実質コストは賃貸より安くなります。物件が半額近くまで値下がりしない限り、持ち家の方が有利です。

 

賃貸から買い替えはできるが、逆は難しい

ライフプランの柔軟性という観点では、賃貸に大きな利点があります。

賃貸から持ち家への移行は、資金計画が立てば比較的容易です。

しかし、一度家を所有すると、売却には時間とコストがかかり、ローン残高によっては簡単に手放せない状況も考えられます 。

そのため、持ち家から再び賃貸へ戻るという選択は、心理的にも経済的にもハードルが高くなります。

もし将来のキャリアや居住地について不確定要素が多いのであれば、急いで結論を出さずに賃貸を継続し、自己資金を貯めながらじっくりと考える時間を持つのが賢明な戦略と言えるでしょう。  

 

将来的な介護や実家相続なども視野に

住まい選びは、自分たち夫婦だけの問題に留まらない可能性があります。

将来、親の介護が必要になった場合、実家の近くへ移り住む、あるいは同居するといった選択肢が浮上するかもしれません 。

また、実家を相続することになれば、その家をどうするのかという問題も発生します。現在の住まいから遠く離れた実家を管理するのは大きな負担になり得ます。

これらの可能性は、将来必要となる住まいの場所や形態に大きく影響を与えるため、長期的な視点として夫婦で話し合っておくことが重要です 。



後悔しない選択のために必要なのは「納得感」

※写真はイメージ(Adobe Stock/buritora)

 

最終的に「正しい答え」は計算シートの中ではなく、お二人の中の「納得感」にあります。このプロセスは将来の後悔を最小限に抑え、夫婦双方が心から満足できる決断を築き上げるためのものです。

この大きな決断はお二人のコミュニケーションを深める絶好の機会でもあり、オープンに話し合い、互いの意見に耳を傾け、譲歩する姿勢が大切です。

持ち家に傾いているものの特定のエリアに確信が持てない場合は、その地域で1〜2年「お試し賃貸」をしてみるのもリスクの低い有効な戦略です。

最終判断前には専門家の知見活用を強く推奨します。日本FP協会や金融庁提供の無料「ライフプランシミュレーション」ツールで住宅ローンが貯蓄や老後資金に与える影響を可視化し、金融機関に属さない中立的なファイナンシャルプランナーへの相談も有効です。

どちらの道を選ぶにせよ、お二人が共に情報を集め、話し合い、熟考を重ねて下した決断こそが未来の幸せな暮らしの礎となります。

 

 

関連記事:結婚後?出産後?夫婦の住宅購入タイミング、どっちが良い?後悔しない選び方

関連記事:夫婦の家づくり、まず何から始めるべき?理想の住まいを叶えるポイント

関連記事:夫婦二人暮らしにちょうどいい間取りは?人気のタイプと失敗しない選び方

 

 

【無料&子連れ大歓迎】モデルハウスを見学してみよう

理想のお家づくりが分かる!「モデルハウス自由見学」って?

 

イベント情報