【子なし夫婦の家選び】購入タイミングやポイントは?ちょうどいい間取り&家づくりのヒント
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子どもがいないからこそ、どんな家が自分たちにとっての「正解」なのかわからない…。
そんな悩みを抱える子なし夫婦(DINKs)は少なくありません。
しかし、その制約のなさは、裏を返せば「二人だけの理想」をどこまでも追求できる究極の自由でもあります。「いつ買うのがベストなの?」「私たちに最適な広さや間取りは?」「老後のことも考えると、どんな家がいいのだろう?」これらの問いは、多くの夫婦が直面するものです。
この記事では、子なし夫婦が家づくりで直面するあらゆる疑問にお答えします。
購入の最適なタイミングから、二人にとって「ちょうどいい」間取り、人気のエリア、日々の暮らしを豊かにする住宅設備、そして将来を見据えた資産価値の考え方までを網羅的に解説します。
子なし夫婦が家を購入する最適なタイミングは?
子なし夫婦にとって住宅購入の最適なタイミングは、単一の出来事によって決まるものではありません。
それは、「ライフスタイルの安定」「金銭的な準備」「購入目的の明確化」という三つの要素が重なり合った、まさに機が熟した瞬間です。
この三つの柱を軸に、ご自身の状況を客観的に見つめることで、最適な購入タイミングが見えてくるでしょう。
ライフスタイルが安定してきたとき
家は日々の暮らしの基盤となる場所のため、自分たちの生活様式がある程度確立し、「しばらくはこの場所、このスタイルで暮らしたい」という確信が持てたときが購入を検討する最初のサインといえます。
具体的には転職や転勤、Uターンなどの可能性が当面低いと見込まれ、勤務地が固定されてきた段階が挙げられます。
特に共働きの場合、夫婦双方の通勤利便性を考慮した「定住したいエリア」が具体的になっていることが重要です。
子どもがいる家庭のように学区に縛られる必要がないため選択肢は自由ですが、その分二人のキャリアプランが立地の決定に大きく影響します。
また結婚して2〜3年が経過し、お互いの生活リズムや価値観、お金の使い方などが落ち着いてきた頃も有力なタイミングです。
共に暮らす中で「休日はどう過ごしたいか」「家で何を大切にしたいか」といった共通のビジョンが固まり、それを実現するための器として「家」を具体的に考えられるようになります。
住宅ローンを無理なく組める年齢のうちに
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ライフスタイルが安定しても、金銭的な準備が整っていなければ購入には踏み切れません。特に住宅ローンは年齢や家計の状況が大きく関わるため冷静な判断が求められます。
まず重要なのが住宅ローンの完済時年齢です。多くの金融機関では完済時年齢の上限を80歳未満と定めており、35年ローンを組む場合、遅くとも45歳までには開始する必要があります。
35歳で35年ローンを組めば完済は70歳ですが、45歳で組むと完済は80歳となり、定年後の返済負担が重くのしかかります。
子なし夫婦の強みは将来の教育費という大きな支出がないことで、その分若いうちから住まいに資金を投じ、繰り上げ返済などで早期完済を目指す戦略も有効です。
現在の家賃に対して「もったいない」と感じ始めたとき
住宅購入を考える具体的なきっかけの一つが、家賃が高くてもったいないと感じ始めたときです。賃貸に住んでいて「この家賃でローン払えるのでは?」と感じたら、それは住宅購入を検討する絶好のチャンスといえるでしょう。
同じ金額を支払うなら、毎月の賃料として消えていくお金よりも、将来の資産になる持ち家の方が経済的に安心できるという考え方は合理的です。
賃貸では何十年払い続けても最終的に何も残りませんが、持ち家なら資産として蓄積され、ローン完済後は住居費の負担が大幅に軽減されます。
ただし判断の際は、固定資産税やメンテナンス費用も含めて総合的に比較することが重要です。
持ち家には月々のローン返済以外にも維持費がかかるため、単純な月額比較だけでは不十分です。
月々の支出のなかで「住居費」をどう位置づけるかが判断の軸となり、長期的な家計設計の観点から慎重に検討する必要があります。
ライフプランに大きな変化がないと見込めるとき
住宅購入を検討する適切なタイミングの一つは、ライフプランに大きな変化がないと見込まれるときです。
具体的には今後子どもを持つ予定がない(または希望しない)場合、介護・転勤・転職・帰郷などの可能性が低い状況、そして自分たちのライフスタイルがある程度確立している段階が挙げられます。
子なし夫婦の最大の強みは「柔軟性」にあります。子どもの学区や成長に合わせた住環境を考慮する必要がないため、立地選択の自由度が高く、夫婦二人の価値観や好みを最優先に住まいを選べます。
また、将来的な家族構成の変化を見込む必要がないため、長期的な視点での住宅設計が可能です。
住宅購入の目的が明確になったとき
住宅購入のもう一つの重要なタイミングは、購入目的が明確になったときです。在宅ワークのためのスペースが欲しい、趣味やペットとの暮らしを楽しむ家がほしい、老後も見据えて"終の住処"としての家を考えたいなど、具体的な理由が明確になることが大切です。
「なんとなく欲しい」という漠然とした動機ではなく、「こういう暮らしがしたいから」という明確な理由があると、住宅購入の満足度は格段に高まります。目的が明確であれば、間取りや立地、予算配分などの判断基準も定まりやすく、後悔のない選択ができるからです。
例えば在宅ワークが目的なら防音性や通信環境を重視し、趣味を楽しむことが目的なら専用スペースの確保を優先するなど、目的に応じた住宅選びが可能になります。
明確なビジョンを持つことで、理想の住まいの実現に近づくことができるでしょう。
子なし夫婦が家を購入するメリット・デメリット
子なし夫婦の家選びは、自由度の高さが最大の特徴ですが、その裏には特有のリスクも存在します。中心となるのは、「二人への徹底的な最適化が可能」というメリットと、「将来の変化に対応しにくい」というデメリットの間のトレードオフです。この両側面を深く理解することが、後悔のない選択への第一歩となります。
メリット
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間取りを最適化しやすい
第一に「空間の最適化」が可能です。子育て世代が子ども部屋の数や広さに頭を悩ませるのとは対照的に、すべての空間を二人のライフスタイルに合わせて最適化できます。
複数の小さな部屋を設ける代わりに、広々としたリビングダイニングやゆったりとしたマスターベッドルームを確保し、余った部屋はそれぞれの趣味を存分に楽しむための空間として活用できます。
立地の自由度が高い
第二に「立地の最適化」も挙げられます。学区という制約から解放されるため、立地選びの自由度が格段に高まり、夫婦双方の職場へのアクセス、趣味やカルチャーを楽しめる都心部、静かで落ち着いた環境など、二人の価値観を最優先したエリア選びが可能です。
予算をかけてこだわった家づくりができる
第三に「金銭的な最適化」も大きなメリットで、将来の教育費という数千万円単位の出費を考慮する必要がないため、その分の予算を住宅そのものに振り向け、より質の高い建材や最新の設備、こだわりのインテリアなど、二人の暮らしを直接豊かにするものへ投資できます。
デメリット
一方で、二人だけに最適化された家は将来の予期せぬ変化に対して脆弱になるという側面も持ち合わせており、このリスクを直視し対策を考えておくことが不可欠です。
最も深刻なリスクは「夫婦関係の変化」で、万が一離婚に至った場合、二人用に最適化された家や共有名義の住宅ローンは複雑な問題を引き起こす可能性があります。
特にペアローンを組んでいる場合、どちらか一方が住み続けるにしても相手の分のローンをどうするか、売却するにしてもローン残債をどう清算するかなど、精神的にも金銭的にも大きな負担となり得ます。
次に「キャリアやライフプランの変化」のリスクです。持ち家は良くも悪くもその土地に根を張ることを意味し、魅力的な海外転勤のオファーや別の都市への移住希望があっても、賃貸のように簡単には動けません。
また「相続人がいない」という長期的な課題も存在し、子どもがいない場合、夫婦が亡くなった後その家を誰が引き継ぐのかという問題が生じます。
関連記事:結婚後?出産後?夫婦の住宅購入タイミング、どっちが良い?後悔しない選び方
子なし夫婦におすすめの間取り・広さは?
子なし夫婦の家づくりにおける間取りの核心は、「親密な一体感」と「尊重された独立性」という二つの要素をいかに絶妙なバランスで両立させるかにあります。
目指すべきは、二人の繋がりを育む開放的な共有空間と、それぞれの仕事や趣味、一人の時間を邪魔されずに過ごせる独立した空間がスムーズに共存する住まいです。
コンパクトなワンフロア・平家
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近年人気が高まっている「平屋」は、ワンフロアで生活が完結し年齢を重ねても安心して暮らし続けられる「終の棲家」として最適です。
間取りとしては1LDKから2LDKが現実的で、特に2LDKは多くの子なし夫婦にとって「黄金比」といえる間取りです。共有のLDKに加えプライベートな部屋が二つ確保でき、一体感と独立性を理想的に実現できます。
趣味部屋など夫婦の空間を確保
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子なし夫婦最大の特権は、子ども部屋の代わりに「大人のための部屋」を確保できることです。楽器演奏なら防音室、DIYなら作業部屋、読書なら壁一面の本棚を備えたライブラリーなど、お互いの個性を尊重し円満な関係を続けるための重要な要となります。
回遊動線も意識
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コンパクトな空間で快適に暮らすための「回遊動線」も有効で、家事や生活における夫婦の動きが交錯しにくくなり日々のストレスが軽減されます。
※関連記事:No50「夫婦 二人暮らし 間取り」、No55「夫婦 趣味部屋」追加
DINKsに人気の住宅スタイル・エリア
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子なし夫婦(DINKs)の住まい選びは、単なる「箱」を選ぶ行為ではなく、自分たちの価値観を体現するものを購入することに他なりません。
立地、物件の種類、周辺環境のすべてが二人が望む暮らしを構成する重要な要素となります。
DINKsに人気の住宅スタイルは大きく二つに分類でき、一つは都市の利便性を享受するスタイル、もう一つは郊外で趣味やゆとりを追求するスタイルです。
「都市型コンパクトハウス・マンション」は、都心や駅近の利便性を最優先し、職住近接を叶え、仕事終わりのディナーや週末の観劇など都会ならではの刺激的な日常を求めるライフスタイルです。
一方「趣味を楽しむ郊外の家」は、都心から少し離れた場所で広さや自然を重視し、ガーデニングに打ち込める広い庭や車やバイクいじりができるガレージなど、趣味に没頭できる空間的なゆとりを手に入れます。
DINKsが惹かれる街には共通する特徴があり、交通の便が良いだけでなく、街自体に独自の魅力があり、大人が楽しめる文化や食が根付いていることです。
夫婦2人の暮らしを快適にする住宅設備&工夫
夫婦2人の暮らしを快適にする住宅設備と工夫は、子育て世代とは異なる特有のニーズに焦点を当てることが重要です。
片付けやすい収納スペース
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ミニマルで片付けやすい収納では、子ども用品がない分、大人の衣類や趣味の道具を効率的に収納できるシステムが求められます。
ウォークインクローゼットや造作収納を活用し、見た目もすっきりと保てる「隠す収納」と、お気に入りのコレクションを美しく飾る「見せる収納」を使い分けることで、洗練された空間を維持できます。
生活リズムに合わせた間取り設計
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お互いの生活リズムを邪魔しない工夫として、防音性能の高い間仕切りや個室の配置が効果的です。
一方が早朝出勤で他方が在宅勤務といった異なるライフスタイルでも、音や光で相手を妨げない配慮が必要です。
寝室と書斎を離して配置したり、廊下を挟んで部屋を配置するなどの工夫が有効です。
家事動線も意識する
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生活動線と家事効率を意識した間取りでは、2人分の家事分担がしやすい設計が重要で、キッチンからパントリー、洗面所への回遊動線や、洗濯から干し場、収納までの一連の流れをスムーズにする工夫が日々のストレスを軽減します。
また、掃除ロボットやスマート家電の活用により家事負担を大幅に削減できます。
将来も見据えた夫婦の「家選び」のポイント
将来を見据えた家選びでは、現在の快適さだけでなく、10年後、20年後の暮らしやすさまで考慮することが重要です。子なし夫婦にとって、住まいは「終の棲家」となる可能性が高いため、長期的な視点での判断が求められます。
バリアフリーへの対応
年齢を重ねても安心して暮らし続けるため、将来のバリアフリー化を見据えた家選びが重要です。
現在は必要性を感じなくても、段差の少ない平屋や、将来手すりを設置しやすい構造の家を選ぶことで、大掛かりなリフォームを避けられます。
特に浴室やトイレ、玄関周りは転倒リスクが高いため、あらかじめ安全性を考慮した設計を選びましょう。
また、車椅子での移動も想定し、廊下幅や出入り口の寸法にゆとりのある物件を選ぶことで、将来の不安を軽減できます。
階段の上り下りが困難になった場合でも、ワンフロアで生活が完結する平屋なら安心です。
資産価値が下がりにくい立地・構造
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子なし夫婦の場合、将来的に家を相続する子どもがいないため、売却や賃貸活用を視野に入れた資産価値の維持が重要な要素となります。
駅から徒歩10分以内、複数路線利用可能、商業施設や医療機関が充実しているエリアは、将来にわたって需要が見込まれる立地です。
建物については、耐震性や断熱性能に優れた構造を選ぶことで、長期的な資産価値の維持が期待できます。
また、あまりに個性的すぎる間取りや設備は、将来の売却時に買い手を限定してしまう可能性があるため、汎用性の高い設計を選ぶことが賢明です。
定期的なメンテナンスで建物の状態を良好に保つことも、資産価値維持の重要な要素です。
管理・維持の手間が少ない建物
年齢を重ねるにつれて、建物の管理や維持にかかる労力は大きな負担となります。
マンションの場合、外壁や屋根の修繕、エレベーターの点検など、大部分の維持管理を管理組合に任せられるため、個人の負担が軽減されます。
一方、戸建てを選ぶ場合は、コンパクトな設計にすることで清掃や点検の手間を最小限に抑えられます。
庭がある場合も、手入れが容易な植栽を選んだり、人工芝やウッドデッキを活用したりすることで、維持管理の負担を軽くできます。
将来的に自分たちで管理が困難になった場合の外部委託も視野に入れ、管理しやすい構造や立地を選ぶことが長期的な安心につながります。
夫婦二人の好きと快適を詰め込んだ家選びを
※写真はイメージ(Adobe Stock/polkadot)
子なし夫婦の家選びでは、何に重きを置くかで正解は変わります。既成概念の「正解」を探すのではなく、二人だけの「最適解」を創造することが重要です。
子育てという大きな指針がないからこそ生まれる迷いは、何にも縛られずに自分たちの価値観を純粋に反映させられる、またとない機会といえます。
長く快適に過ごすためには「自分たちらしさ」が一番大事で、世間の常識や他人の選択ではなく「私たちにとって何が一番心地よいのか」という問いを常に中心に据えることが必要です。
今の快適と、将来の安心の両方を考えた家づくりがポイントで、現在の「好き」と「快適」を存分に詰め込みながら、将来の「安心」も賢く計画することが大切です。
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